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心の耕し 豊かでタフな人間性の涵養を

12面記事

書評

教育フォーラム68
梶田 叡一 責任編集
日本人間教育学会 編
コロナ禍を豊かな内面育む機会に

 コロナ禍の窮屈な日常、気持ちの晴れない日々。そうした中だからこそ、「心の耕し」のことを考え、「心を耕す」取り組みに気持ちを向け直そうと編まれたのが本書である。
 巻頭論文「心の耕しを」で梶田叡一氏は、コロナ禍における自粛生活の「自己の耕し」の卑近な例として、

 (1) ラジオ体操などによる身体機能の活性化
 (2) 近所の散歩(身体のため、四季折々の草木や花の再発見、近所の人や犬猫との出会い、家々のたたずまいに目が留まる)
 (3) 意図的なテレビ視聴(意識世界への揺さぶり)
 (4) 音楽(意識世界をリフレッシュ、新たな意識の色調への導き、無意識の本源的自己にまで届く揺さぶり)
 (5) 周囲の親しい人とのおしゃべり(離れた人との電話やテレビ電話、メール交換も)
 (6) 最大最高の耕しとなる読書

 ―の六つを挙げている。
 これを受けて、執筆者たちがそれぞれの視点・立場に立って、読書との関わり、文学作品の「語り」活動、身近な自然に親しむ、茶道の学びと「和敬清寂」の日常化、武道による業稽古、スポーツ活動、心の耕しを生み出す特別支援教育、音楽活動が生み出す人間の力などを通じた「心の耕し」の具体的在り方を提言している。
 かつて梶田氏から、culture(文化)の語源には「耕す」という意味がある、と聞いた記憶がある。疫病を乗り越えた果てに、新しい文化が芽生えることを期待したい。
(2640円 金子書房)
(規)

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