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知的障害のある子への「プログラミング教育」にチャレンジ!

12面記事

書評

水内 豊和・山崎 智仁 著
学習意欲を刺激、飛躍の翼与える

 小学校のプログラミング教育は特別支援学校でも必修だが、初年度、スムーズに授業を開始できた学校は少ない。教員の知識やスキルの不足が第一の要因であるが、現場には「知的障害児にプログラミング教育を行う意味が分からない」との戸惑いもあったようだ。
 著者の水内氏は富山大学人間発達科学部准教授、山崎氏は同学部附属特別支援学校教諭。平成29年に水内研究室で議論を開始し、構想を固め、昨年度から現場で実践してフィードバックしてきた。その同時進行の記録と成果報告を「週刊教育資料」(教育公論社)で昨年7月から18回にわたり連載。加筆、再編集したのが本書である。
 同特別支援学校では、端末やアプリ、ロボットを「楽しく学ぶ仲間」として受け入れ、知的障害や発達障害の子どもたちの学習意欲を刺激した。翻って考えると、ICT機器やアプリは普通学級においても”支援ツール”なのである。生きる力を育むことを主題とする特別支援学校では当たり前の視点なので、新しいツールの導入にも力みがない。無理なく学習活動に溶け込ませ、着実に成果を上げた。
 水内氏は「週刊教育資料」でインクルーシブ社会の実現を語るエッセーを連載中。社会的弱者に注がれる視線の温度は心地よいばかりだが、それは本書も同様で、両氏のヒューマニズムが行間にあふれている。要するにプログラミング教育の意義とは、子ども一人一人の可能性を見いだし、飛躍の翼を与えることに他ならない。(1980円 明治図書出版)
(由)

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