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医療的ケアとは。学校における医療的ケアの実施に求められること

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特集 教員の知恵袋

 文部科学省は、2021年6月18日に『医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)』を公布しました。この背景には、学校における医療的ケア児の数が増えていることが関係しています。

 学校において医療的ケア児の対応を適切に行うためには、どのようなことが求められるのでしょうか。今回は医療的ケアの概要と法律施行の背景、学校における医療的ケアの考え方などについて解説します。

医療的ケアとは

 医療的ケアとは、たんの吸引や経管栄養、気管切開部の衛生管理など、学校や在宅などで日常的に行われる医行為のことです。ここでの医行為は、医学的判断及び技術を用いて行わなければ人体に危害を及ぼしたり、危害を及ぼしたりするおそれのある行為を指します。

 2012年の制度改正により、医師や看護師の免許を所有しない教職員も、以下に示す5つの特定行為に限って行うことができるようになりました。

・口腔内の喀痰(かくたん)吸引
・鼻腔内の喀痰吸引
・経鼻経管栄養
・気管カニューレ内の喀痰吸引
・胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養

 ただし、これらの特定行為は研修を受けて都道府県知事に認定された場合のみ、一定条件のもと認定特定行為業務従事者として実施できることになっています。

 なお、学校に在籍していて、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に不可欠な児童・生徒のことを医療的ケア児といいます。

医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律

 2021年6月18日に『医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律』が公布され、9月18日から施行されることになりました。

 この法律では、医療的ケア児とその家族に対する支援の基本理念を定め、国や地方公共団体等の責務、保育及び教育の拡充に係る施策、医療的ケア児を対象とする支援センターの指定などを明確に定めています。これにより、医療的ケア児の健やかな成長を促して、安心して子どもを生み育てられる社会の実現を目的としています。

出典:文部科学省『医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律の公布について』

法律施行の背景にある医療的ケア児の増加

 『医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律』が公布される背景にあるのは、医療的ケア児の増加と多様化です。文部科学省『令和元年度学校における医療的ケアに関する実態調査』によれば、幼稚園・小・中・高等学校に在籍する医療的ケア児の数は年々増加しています。

 ひと口に医療的ケア児といってもその実態は一様とはいえません。重症心身障害児だけではなく、活発に動き回ることができる児童・生徒もいます。個人差があるからこそ、一人ひとりの医療的ケアの状態や教育的ニーズに合わせた指導が必要です。

出典:文部科学省『令和元年度学校における医療的ケアに関する実態調査』

学校における医療的ケアの考え方

 学校における医療的ケアの実施は、教育面・安全面ともに大きな意義を持ちます。医療的ケア児一人ひとりに合わせたケアを行うには、教員や看護師、保護者、教育委員会など、関係者が役割分担を適切に行いつつ、各々が責任を果たすことが大切です。

学校での役割分担

 学校における医療的ケアを滞りなく実施するには、以下に示すようにそれぞれの役割分担を行います。

 なお、実施にあたっては教育委員会が示すガイドラインにもとづいて学校ごとに実施要領を策定することも重要です。また、指導の立場にある看護師は上記の役割のほかに外部関係機関との連絡調整をしたり、研修会を企画・運営したりする役割もあります。

 それぞれの詳しい役割分担については、文部科学省の『【行政説明】学校における医療的ケアの現状と学校に勤務する看護師の役割について』にてご確認ください。

出典:文部科学省『【行政説明】学校における医療的ケアの現状と学校に勤務する看護師の役割について』

教育委員会の管理体制のあり方

 学校において医療的ケアを実施するにあたっては、医療や福祉の知見を活用した総括的な管理体制の構築が欠かせません。具体的には教育、福祉、医療等の関係者と保護者の代表者などから構成される医療的ケア運営協議会の設置が求められます。

 指導的な立場となる看護師を指名したり、相談対応や実地研修の指導をさせたりするほか、管理体制の一環として教育委員会に看護師を所属させて複数校に派遣するなど、看護師の情報共有や相談を行いやすくすることも有効です。

 しかし、2019年時点で教育委員会や学校に指導的立場の看護師を配置しているのは全国の都道府県と政令指定都市の全67自治体のうち20自治体とまだまだ少ないのが現状です。

学校における医療的ケアの実施には全関係者が責任を果たすことが重要

 医療的ケア児は年々増加するとともに多様化し続けており、一人ひとりの状況や教育的ニーズに適した対応が求められています。医療的ケア運営協議会の設置や学校単位での実施要領の策定、さらに保護者を含めた関係者間の共通理解を図ることも欠かせません。

 学校における医療的ケアを適切に、かつ効果的に実施するためには、各自治体で教育委員会の管理体制を整えることはもちろんのこと、医療的ケア児や保護者の意思を尊重しつつ、学校内で教職員や看護師、養護教諭などがそれぞれの責任を果たすことが重要です。

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