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学問へのファーストステップ(4) 人権論の教科書

14面記事

書評

古橋 エツ子 監修
和田 幸司 編著
現代社会の広範な課題を解説

 東京オリンピック開幕を前に、大会関係者の辞任が相次いで報じられた。いずれも人権上の配慮の欠如によるものだった。しかし、これは人ごとではない。評者を含め、誰でも基本的人権について学び、一般的知識は持っているはずなのに、概念として知っていることと個別具体的な側面について考えることとは大いに異なるのだ。
 本書は文字通り、「教科書」だ。序章を含め、3部15章構成だが、各章の冒頭、「イオリさん」という若者がナビゲーター役として人権に関するさまざまな課題を提示する。序章は、「人権について学びませんか」だが、ここだけでも自らの知見の乏しさを痛感させられた。
 次いで、Ⅰ部では「現代社会が抱える人権問題」が6章提示される。女性、子ども、高齢者、障害、同和問題、外国人、それぞれに関わる課題が解説されるが、いずれを取っても、軽々に受け止められないことばかりだ。表面的な人権意識に警鐘を鳴らしてくれる。
 Ⅱ部では「人権をめぐる新たな問題」、性的マイノリティー、医療と人権、ハラスメント、経済的格差と貧困の4章仕立てだ。いずれも今を生きるわれわれには避けて通れぬ課題ばかりである。読みながら真剣に悩んでしまった。
 人権とはこんなにも奥が深く、かつ幅広いものだとは知らなかった。良き「教科書」を手にできたわが身の幸せに感謝である。
(3300円 ミネルヴァ書房)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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