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教科書と近代文学「羅生門」「山月記」「舞姫」「こころ」の世界

16面記事

書評

日本近代文学館 編
定番教材を易しく解き明かす

 新学習指導要領では、高校国語の科目構成が大きく変わる。選択の仕方によっては、優れた文学作品にあまり触れないまま卒業する生徒が生じるのではと懸念を示す声もある。
 本書は、高校国語の定番教材とされる「羅生門」「山月記」「舞姫」「こころ」を、それぞれ研究者が詳しく解説している。作品はいずれも1950年代に教科書に採録され、教科書教材に要するさまざまな条件をクリアしながら、昭和、平成という長い時間を生き延び、多くの高校生に読まれてきた。
 難しい作品だからこそ、教室で教師の説明に耳を傾け、友達と意見を交わしながら、一つ一つの言葉に注目して読み進める国語教材としての価値を持つのだろう。
 また、教科書教材に導かれ、芥川龍之介や中島敦、森鴎外、夏目漱石らの作家と作品に興味を持ち、読書の幅を広げた人も少なくないだろう。
 本書は、日本近代文学館で開催された4回の展示を基に書籍化されたもの。分かりやすい解説とともに、自筆の原稿や書簡、掲載教科書など、多くの資料がカラー写真で紹介されていて、さながら展覧会会場で音声ガイドを聞きながら歩いているような感じがしてくる。作品の背景を広く知ることによって作品が立体化してくるので、改めて原文に挑戦し、読み味わってみたい衝動を感じさせる書籍である。
(2200円 発行・秀明大学出版会、発売・SHI)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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