個別面談と進路検討会議を充実
8面記事学校推薦・総合型選抜に勝つ 上
広島県立安古市高校
広島県有数の進学校として知られ、高い理想や志を掲げ、これからの社会に貢献できるリーダーの育成を目指す広島県立安古市高校(若狹健吾校長、生徒943人)。10年連続で国公立大学合格者が200人を超えるなど高い進学実績を維持している。「頑張ることがかっこいい」という価値観が生徒に根付き、学習面だけでなく部活動や学校行事、地域活動でも、その精神が発揮されているという。
昨年度の国公立大学の現役合格者は215人で、京都大学や九州大学などの難関大学や広島大学の合格者は48人。国公立大学の推薦型選抜の合格者数は19人、総合型選抜は5人で、受験者の合格率は高かった。昨年度は新型コロナウイルスの影響で面接が中止になるなど頻繁に試験内容が変更され、生徒や教員の負担は大きかったが、出願者・合格者とも旧AO入試の時代を含め過去最高の結果となった。
コロナ禍にあっても実績を上げることができた背景について若狹校長は、1年次から生徒への個別面談を丁寧に行い、進路検討会議を充実させてきたことを挙げる。個別面談では、同校の校訓「仰高」(心豊かな人生の創造をめざし高遠の理想を仰ぐ)を踏まえて、これからどんな人間になりたいか、リーダーとして社会にどのように貢献していきたいか―といった問いを発し、理想の姿に近づくために今なすべきことや進路について考えさせる。自分の長所や日々の教育活動で体験したことの意義、これから実現させたいことなどのメタ認知を促し、目的を持って高校生活を送れるようにしていく。そのため選抜方法が変更されても、大きく揺らぐことなく本番に臨めたという。進路検討会議では、各担任が生徒一人一人の進路や将来像について自信を持って語れる力を身に付けさせるように努めてきた。管理職を含めた複数人で生徒の現状を語り合い、指導の方向性を検討する。
教員が生徒の資質・能力や興味・関心などを見極める場としては、総合的な探究の時間「仰高ゼミ」も活用。探究活動で選んだテーマや問題意識も進路を考える参考にする。また2・3年次にクラス替えを行わないことで、生徒の特性をじっくり見られるようにした。
この他、大学のオープンキャンパスに当たっては、事前指導でその大学で「何を見てくるか」など目的を話し合い、事後指導でリポートをまとめさせるなどしている。
進路指導主事の大井悠一朗教諭は、同校の進路指導の特徴として、教員が「チーム安古市」の一員として互いに協力し、生徒を温かく見守り、夢の実現に向けて行動することが当たり前になっていることを挙げる。
若狹校長は、「生徒の光る部分を決して見落とさず、大事に育て、輝き続けられるようにアプローチする職員集団にいつも感謝している。こうした姿勢が結果として、進路の実現につながっている」と強調した。
本連載では、各学校が取り組む推薦、総合型選抜入試に向けた指導などについて紹介します。