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アドラー心理学で考える学級経営 学級崩壊と荒れに向き合う

19面記事

書評

赤坂 真二 著
健康な集団づくりの具体的手だて

 教室内での立ち歩き、教師に向かって「うぜ」と返す子。荒れた子どもの対応に苦慮しているのは今や初任者だけではない。
 本書は、アドラー心理学的アプローチで子どものやる気と自信を高める学級経営について実証的な研究を進めてきた著者が、荒れの未然防止のため教師の個人的・治療的アプローチに力点を置いて書かれたものである。
 問題解決を困難にしているのは問題の捉え方が誤っているのではないかとする著者は「本書の目的は荒れの解消や学級崩壊の治療ではない」という。マイナスをゼロの状態にするのではなくプラスの状態に育てることを意図し、集団の機能回復と子どもの人格形成や自立のための情報提供をねらいとしている。
 第1章「学級崩壊を困難な課題にしている理由」、第2章「学級崩壊とアドラー心理学」、第3章「学級崩壊に向き合う」の3章構成。具体的な実践事例からアドラー心理学の「個人の問題は、その人が今属している集団の人間関係の中で生まれる。したがってその問題は、その人が属している人間関係をより健康なものに調整すれば消えていくはず」という理念が理解できる。
 不適切な行動で居場所を確保している子が適切な行動で居場所を確保できるよう、担任として何をすべきか。子どもに関わる全ての人に手にしてほしい良書である。
(2530円 明治図書出版)
(伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室専門員)

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