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コロナ禍で実感を伴った理解に「カセットこんろ」を活用

10面記事

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愛知県・豊田市立朝日丘中学校

実験を効率よく行うことが求められる中で
 理科の新学習指導要領では、「理科の見方・考え方」を働かせるために観察・実験が重視されている。また、そうした活動を保障するためには実験を効率よく行うことが必要になるため、新しい加熱器具として「カセットこんろ」が注目されている。
 学校への配備が進められている「理科実験用ガスコンロ」は家庭用より一回り小さく、四脚の網台(五徳)が付いているのが特長。ボンベが熱くなったら自動で火を消す機能や、正しくセットしないと火を点けるつまみを回せないなど、安全設計にも配慮されている。
 こうした中、コロナ禍でグループによる実験が思うようにできない中でも、実感を伴った理解を植えつける工夫として柔軟に活用しているのが、豊田市立朝日丘中学校の富田祐介教諭(2年・理科担当)だ。

教室にカセットこんろを持ち込んで実験も
 「私自身も火を扱う実験の多くはガスバーナーを使っていますが、1学年あたり7~8クラスと多く、校内に2つある理科室がふさがっているときは、普通教室に理科実験用ガスコンロを持ち込んで実験を行っています」と話す。たとえば水を加熱して温度上昇を観察するといったシンプルな実験であれば、教室で複数台を使用してもなんら問題はないという。
 このようにどこでも手軽に移動して活用できるのが「理科実験用ガスコンロ」の最大の長所だ。「しかも、ガスバーナーだと火を点けるときや火力の調節に手間取るなど実験のスタート段階でつまずくケースが多いのですが、理科実験用ガスコンロはそうしたことなく誰でもすぐに着火できるので、実験後の学びを深める時間を削る心配が要らないのが利点です」と指摘。
 加えて、火力も3段階で調整できて実験結果にバラつきが少なくなるため、「教師にとっては授業の組み立てがしやすく、生徒も失敗したという感覚が減ると思います」と魅力を挙げた。

ICTでは得られない、五感に働きかける体験を
 さらに、昨年以降は緊急事態宣言などによってグループの活動が制限される期間が多くなっているが、その中でも実物を見せたいという思いから、教室で生徒に対し、演示実験をすることにも積極的に取り組んでいる。「つい最近も『鉄と硫黄の化合』の実験をして見せましたが、その際、発生する卵の腐ったような臭いは映像では決して感じられないものであり、目で見るだけでは分からない実験は極力行うようにしています。その点でも、手軽に活用できる理科実験用ガスコンロはありがたいですね」と評価する。
 コロナ禍の理科授業では、ともすればICTに偏りがちになり、実物を目にしたときの「すごい!」、「不思議だ!」といった感動と併せて、本当の意味での五感に働きかけるアプローチが足りなくなる。そうした実感を伴った理解を引き出すうえでも、「理科実験用ガスコンロ」の使い勝手のよさが重宝されているようだ。なお、一般社団法人日本ガス石油機器工業会では、「カセットこんろ」の安全で正しい使い方を学べるDVD教材を作成し、全国の学校に無料配布している。ぜひ、取り寄せるなどして参考にしてほしい。

 問い合わせ=03・3252・6101
 https://www.jgka.or.jp/

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