地元の魅力を伝えるポスターを作り、旅行先で配布
12面記事熊本城下で宣伝パンフレットを手渡す生徒
佐賀県・武雄市立武雄中学校
生徒の興味・関心を高め、普段の学習では得られない教育効果
武雄市立武雄中学校は、毎年9月に鹿児島~熊本を巡る2泊3日の修学旅行(3年生)を探究学習の場として活用している。「5年前から『武雄のことを鹿児島の人に知っていただこう!』をテーマに、地元の魅力を伝える宣伝ポスターやパンフレットを作成し、訪問先で出会った人たちに配布しています」と話すのは、第3学年主任の宮嵜信仁教諭だ。
学習の流れとしては、夏休みに地元の武雄温泉などの観光スポットや職場体験でお世話になった場所を生徒が自主的に取材して情報を集め、「総合的な学習の時間」(8~10時間)を使って課題の制作に取り組む。「一般的には事前に訪問先を調べる学習が多いと思いますが、実際に足を使って調べられる地元について学んでから現地を体験した方が、厚みのある学習になると考えました」と振り返る。
このように修学旅行を探究の場にすることについては、思い出作りだけでいいという声もあるが、がんばって作ったものを現地の人に見てもらうことは生徒の興味・関心を引き、学習への動機付けが高まると指摘。「こちらが予想した以上の成果物ができたり、コミュニケーションが苦手な生徒も現地の人の親切に触れて成長できたり、宣伝ポスターを渡した店から御礼の手紙が学校に送られてくるなど、普段の学習では得ることができない教育効果を感じています」と手応えを口にする。
地元と現地の「比較・考察」で探究を深める取り組みへ
こうした中、課題として挙げたのが事後学習への取り組みになる。というのも、昨年までは現地での自主研修のテーマを明確にしていなかったため、帰ってからの学習が深まらないという反省があったからだ。
そこで、今年度は武雄(佐賀・北部九州)と鹿児島・熊本(中・南部九州)の「比較・考察」を取り入れて、学びを深めていくことを計画している。「たとえば、山(御船山と桜島)、防災(豪雨と噴火の実際とその対策等)などのテーマを設定し、グループごとに比較・考察したまとめをそれぞれのプレファイル(紙のカード)にする活動です。鹿児島の自主研修ではこのカードの受け取りをお願いするとともに、最終的なまとめを後から送付する取り組みに発展させていくことで、事後学習の質を高めていく意向です」と抱負を語る。
また、探究学習は年々積み重ねることで教員のノウハウが向上し、生徒に向けて的確なアドバイスやヒントも出せるようになるとともに、下級生は過去の成果物を参考にして作品づくりを行うことができる。そうした意味においても、今年度は探究学習としての位置付けをもうワンステップ上げていく機会と捉えている。
ただし、コロナ禍によって鹿児島市内の大学と連携した自主研修が中止を余儀なくされ、まとめの発表会も思うようにできないといった事情も生まれている。それでも「現地で取材できる訪問先を学校側で確保したり、タブレットから誰でも見られる、クラウド上で共有できる成果物ギャラリーを作ったりするなどして、生徒の学びを深める探究の機会や発表の場を絶やさないようにしていきたいですね」と意欲的だった。
「武雄」の宣伝ポスターを制作する様子
実際のパンフレット