田中　博之　著
創意あふれる「深い学び」を紹介

　疑似的なSNS環境を活用して、「誤った情報」を書き込み、情報の不確かさを感じたり、逆に信じてしまったり、あるいは不用意に拡散するなどの実体験を通して小学校道徳を実現させた授業、歌舞伎の勧進帳に登場する人物の性格、心情などが隈取りからどう表現されているかを話し合い、併せてタブレットを用いて記録した自分の顔にペインティングした隈取りを基に、友達の隈取りの工夫点などを話し合う伝統文化をテーマにした中学校美術の授業…。こんな優れた実践を多く収めた。
　GIGAスクール構想の説明、タブレット活用のための教え方、タブレット活用についてのQ＆Aにも７章中４章を割くが、本書の主眼は「主体的・対話的で深い学び」をどう実現しているかを紹介する実践事例にある。初・中・上級編による章分けはともかく、コンテンツ活用、学習評価、協働的思考、プレゼンテーション、作品製作、プログラミングの６タイプに２６事例を掲載し、有用だ。
　授業の全てがタブレット活用で完結しているわけではない。問いが明確なワークシートや効果的な板書、子ども同士の意見の交流などアナログ部分も上手に生かす。課題はいろいろあるだろうが、授業者にとってはタブレットという新たなツールで、これまで実現できなかったアイデアを形にすることができる。そんな熱が実践事例からは伝わってくる。
（２０９０円　学陽書房）
（矢）