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教科担任制の導入が令和時代の学校教育にもたらす変化

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特集 教員の知恵袋

 2022年度をめどに、中央教育審議会が検討を進める小学校の教科担任制が本格導入される見込みです。導入により、授業の質の向上や教員の負担軽減などの効果が期待される一方で、さらなる検討が必要な課題もあります。

 今回は教科担任制の導入で令和時代の学校教育がどのように変化するのか、導入の背景やメリット、課題とともに解説します。

教科担任制とは

 教科担任制とは、中学校で行われているように学級担任以外の教員が理科や外国語、算数など、特定の教科を担当して指導することを指します。対象となるのは小学校の高学年です。

 文部科学省が全国1万9千校以上の小学校を対象に行った調査によれば、2018年度時点、高学年の音楽と理科の授業に教科担任制を実施している学校は約半数に上りました。一方、国語(書写を除く)や算数の授業で教科担任制を実施している学校は1割にも満たないとの結果が出ています。

出典:文部科学省『平成30年度(公立小・中学校等)調査結果』

教科担任制導入の背景

 教科担任制を導入する背景には、2020年度に実施された英語の教科化やプログラミング教育の必修化などがあります。これらの教科の授業は、専門的な指導によって教育の質を確保しなければなりません。

 また、小学校の教員就職者の多くが理数科目に苦手意識を持っているとの指摘もあります。理数系の授業を教科担任制にすることで授業の質が上がれば、教員と児童の両者がメリットを得られます。

 さらに、GIGAスクール構想の加速も教科担任制導入が必要と考えられる理由の一つです。多様な子どもたちを誰一人取り残すことのない個別最適化された学びの実現のためには、新たな時代に合わせた指導体制が求められています。

『GIGAスクール構想』『個別最適化された学び』についてはこちらの記事もご覧ください。

「GIGAスクール構想の目的とは? 予算や環境整備、指導者に求められるポイントを解説」
「個別最適化された学びの概念とその実現に向けた取り組み」

教科担任制の導入で期待されるメリットと検討すべき課題

 教科担任制の導入では、子どもたちが得られるメリットのほか、教員が期待できるメリットもあります。その一つとして、教員が自身の得意分野を生かし、より専門的な指導に専念できることがあげられます。

 しかし、教科担任制を導入するうえで、今後検討が必要な課題の存在も忘れてはなりません。

教科担任制で期待されるメリット

 教科担任制を導入するメリットとして、専門性を持った教員による指導で授業の質を高められることがあげられます。一人の教員が担当する教科が絞られることで、複数の授業の準備にかかる時間と負担を削減し、担当教科の準備時間にあてられます。

 また、小学校から中学校への円滑な接続が実現しやすくなり、子どもたちの中1ギャップ(※1)の解消を望めることも大きなメリットです。

※1…中1ギャップとは、中学校に進学した生徒が新しい環境での学習や生活への移行段階に戸惑いを感じることで、不登校の児童数増加に影響している要因の一つとされている。

検討が必要な課題

 教科担任制によるさまざまなメリットが期待できる一方で、今後検討が必要な課題も存在します。

 まず、小学校高学年に教科担任制を導入する場合、小学校教員養成課程や教員免許制度の大幅な見直しが必要であることです。現在も中学校の教員免許を有する者が小学校で指導を行うことは可能です。

 しかし、9年間の義務教育を見通した教員の指導力を今後さらに向上させるためには、養成段階から見直し、他校種の免許を取りやすい仕組みをつくることが求められます。例として、大学で小学校・中学校に共通する内容の授業科目を開設するという案があげられます。

 次に、教員の専門性を担保することも欠かせません。たとえば、英語科の専科教員には“中学校または高等学校英語の免許状を有する者”、“CEFRでB2相当以上の英語力を有する者”などの要件を設けるといった対応の検討が必要です。

北九州市が実施した一部教科担任制の導入

 北九州市では、2018年度までに小学校全校で学級担任以外による専科指導を実施し、一部の小学校で中学校教員による専科指導を実施する取り組みを行っていました。これらに加え、2019年度には中学校教員が小学校に異動して学級担任を持つ“一部教科担任制”を一部の学校に導入しました。

 一部教科担任制の導入では、以下のような効果が見られました。

・指導教科が絞られることで教員が教材研究を深められる
・授業以外の時間をテストの採点や授業準備、生徒指導にあてられる
・複数名の教員が児童と関わるため、児童が学習・学校生活について相談できる相手が増える

 一方で、導入によって浮かび上がった課題もあります。例としてあげられるのが、中学校から異動してきた教員が小学校の教育課程や児童の発達段階を理解するまでに時間がかかること、教科担任制によって時間割の作成方法が変化し、戸惑いが発生することなどです。

 教科担任制の本格導入を成功に導くためには、これらの課題をもとにした仕組みづくりが欠かせません。

令和時代の学校教育を支える教科担任制

 教科担任制の導入では、小学校高学年における授業の質の向上や教員の負担軽減など多くのメリットを期待できます。

 同時に、指導を行う教員の質を担保すること、他校種の教員免許取得を促進できる制度の見直しなどの課題については今後さらなる検討が必要です。

 学校教育は時代とともに変化を遂げてきました。令和時代の学校教育を支える指導体制として、教科担任制への期待が高まっています。

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