いまこそ自己教育力の練成を コロナ禍に負けない学習者を育てる
12面記事教育フォーラム67
梶田 叡一 責任編集
日本人間教育学会 編
主体的な学習者に育てる方策探る
コロナ禍の中で児童・生徒は、きちんと学習し、学力を付け、必要な体験を積み重ねて人間的に成長していくことができるのだろうか。状況が厳しくなるほど、一人一人が、それに負けないたくましさと自律性を備えているかが問われる。本書は、コロナ禍に負けない主体的な学習者に育てる方策を探っている。
巻頭論文で梶田叡一氏は、「自分をしっかりと持つ」の標題のもと、「挨拶やケジメの励行をはじめとする毎日毎日の日常生活の丁寧な過ごし方を出発点としながら、様々な形での<自己のテクノロジー>の鍛錬を重ね、人間として精神的な面で大きく成熟し成長していくことを、確かな見通しを持ちつつ、一歩一歩支援し、見守っていく」ことの大切さを説く。
以下、多様な自己を持ってたくましく生き抜いた森鴎外の自己教育力に学びながら、多元的な視点を育成する読書の重要性を強調したもの、物語の「自力読みの力」を育む国語授業への転換を提起したもの、茶道の学びから「型があるからこそ臨機応変な柔軟性への扉を開く」ことを強調した貴重な論考などが続く。
他に、算数、音楽、体育の授業、スポーツ、社会教育活動を通じて自己教育力の育成を考察したもの、パンデミック下で、学生と共に試みた「置き去りにしない」「苦手を活かす」ICTマニュアルプロジェクトの実践記録も収録され、本特集を読みながら、逆境からの新しい芽生えが実感された。
(2640円 金子書房)
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