下水道に直結した災害用マンホールトイレを整備し、災害時にも安心なまちづくりを
12面記事京都市の小学校に整備された災害用マンホールトイレ
京都市上下水道局
地域の避難所となる学校では、地震などの災害によって下水道の被害や断水が発生して水洗トイレが利用できなくなる場合に備え、災害用マンホールトイレの整備が求められている。こうした中、京都市ではいち早く整備を進めており、令和2年度までに指定避難所118箇所に実施済みだ。そこで、市上下水道局の担当者に話を聞いた。
断水時も衛生的に使えるトイレとして
「災害用マンホールトイレの整備は、平成23年度に広域避難場所に指定された公園から始め、平成25年度からは避難所に指定されている市立小学校を中心に毎年16箇所程度ずつ整備を進めています」と担当者。導入しているのは、いずれも貯留型のマンホールトイレシステムだ。
本システムは、あらかじめ便槽となる管を地中に布設し、一定間隔で縦管とマンホール蓋を設けておくもので、災害時には蓋を開け、仮設トイレを設置して使用する仕組みになる。貯留式のため、災害によって水洗トイレが使えなくなった際もプール水や雨水などを用いて排泄物を直接下水道管に流せるため、衛生的かつ臭いの少ない清潔なトイレ環境を実現できるのが最大の強み。しかも、貯留ゲートがマンホールと一体化しているため地震に強く、下水道の本管が破損した場合も貯留ゲートによって一定期間貯めておけるといった長所も備えている。
マンホール蓋を開けて仮設トイレを設置
雨水貯留槽で4日分のトイレ排水を可能に
京都市における災害用マンホールトイレの整備の特徴は地中に雨水貯留槽を設け、手押しポンプを使ってトイレ排水ができるようにしていることだ。「学校のプール水は消火用水として設定されており、独立して運用できるようにしている。雨水貯留槽に、屋根や路面からの雨水を貯めることで3日分の容量を確保し、管(便槽)と併せて4日分のトイレ排水が可能になっています」と話す。
上下水道局では、道路下にある下水管や下水処理場の耐震化を進めているが、災害用マンホールトイレの整備は、阪神・淡路大震災において被災者のトイレ不足が問題になったことがきっかけになった。また、それに伴って国の補助金が付いたことも後押しになったという。
「特に多くの人が集まる避難所でのトイレ不足は、使用するのを我慢したり、食事・水分摂取を控えたりしてしまい、避難者の健康を損ねるといった二次被害に発展するおそれがあります」と指摘する。
災害を通じて高まる避難所トイレの重要性
京都市では、1基当たり100人の使用を想定。仮設トイレは行財政局が備蓄物資として備えている。上下水道局ではこうした災害用マンホールトイレの使い方の動画もユーチューブで公開。「いざというときにトイレの確保ができるよう、ぜひ学校や自主防災会などの防災訓練において活用していただければ」とメッセージを送る。
一方、今後についても「この2月にも福島県沖で大きな地震がありましたが、これまでの災害を通じて避難所におけるトイレの重要性の認識も高まっています。引き続き、下水道施設の耐震化の取組と合わせて、災害用マンホールトイレの整備を進めていきます」と継続して取り組んでいく意向だ。