日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

文字からわかる子どもの心理 教師のための筆跡診断マニュアル

16面記事

書評

村山 千佳子・山上 隆男 著
生徒指導に生かす試み

 古来、わが国は三筆、三蹟という言葉でも分かる通り「文字を書く」ことを大切に扱ってきた文化がある。筆跡に性格や個性が反映されるからこそ掛け軸や掲額にして楽しむ文化も生まれたのであろう。
 本書は、これらの伝統を生かしつつ、子どもたちの筆跡を手掛かりに生徒指導に生かすという画期的な試みの書である。おそらく、今までに子どもの書を分析・検討し子どもの深層心理まで探究しようとした事例は、そう多くはないはずだ。
 一番の特徴は子どもたちの筆跡をそのまま示し、性格や行動傾向を示してくれることである。読者は、その文字を見て、自分なりの見解を語れるだろうし、著者の言と対比させながら分析もできる。一致する場合も、そうでないときもあろう。そんなとき、囲み記事の「診断ポイント・筆跡改善ポイント」が有益だ。
 もう一つの特徴が、文字そのものの改善である。子どもたちの筆跡に問題点を朱書き(例えば、はねや止めの不具合、文字の大小の混在、文字間隔の不ぞろい等)し、指導前と指導後の筆跡を示している。効果が一目瞭然だ。
 それでも著者はいう。筆跡診断は子どもの全てを明確に判断するものではなく、知る手掛かりなのだと。この謙虚な姿勢を忘れることなく指導に生かしてほしいものだ。
(1870円 学事出版)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

書評

連載