「幸せ」な学校のつくりかた
12面記事弁護士が考える、先生も子どもも「あなたは尊い」と感じ合える学校づくり
真下 麻里子 著
個人の尊厳が守られる場に
新しい書籍をひもとく時のドキドキ感は、初めて出会う人へのときめきと似ている。本書を開くと、“UDデジタル教科書体”の優しいフォントが出迎えてくれた。
教育現場に法的視点を提供する著者は、いじめ問題を扱う注目度の高い教育学部出身の弁護士である。本書の冒頭、まず「あなたは尊い」と宣言し、学校が「個人の尊厳が守られる場」であることを説く。
一般的に教師は法規に疎い。しかし、いったん知見を得ると、学校現場でもがく教師はつい安易に「法」という力を行使し、「すべき」で押さえ付けようとしてしまうことがある。しかし、著者はこの「ナマハゲ的」使用に警鐘を鳴らし、個人の尊厳を守るツールとして法の知恵を生かそうと提言している。すなわち、「すべき」から「したい」を育て、自己肯定感を高め「個人の尊厳が守られる学校」を実現することをもって「幸せな学校づくり」への方向性を示している。
本書には、今を時めく教育界のオピニオンリーダーたちとの対談が、掲載されている。分野の異なるそれぞれの立場から「これからの学校」と「尊厳」について対談する。自己開示に通じるコラムも含め興味深い。
「引き続き、折に触れて自問自答を繰り返していくことになりそうです」と自らの「探究」をやめず、自身の変容・成長につながる「学び続ける著者」の姿勢が教育現場に関わる人と問題意識を共有する。優しさはフォントだけではなかった。
(2420円 教育開発研究所)
(青木 一・信州大学学術研究院准教授)