日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

流行に踊る日本の教育

16面記事

書評

石井 英真 編著
立ち止まって考える重要性指摘

 教育界に「不易と流行」を説いたのは昭和61年の臨時教育審議会第2次答申であった。その頃から、社会の変化に対応した教育を実現しなければと、学校に次々と新しいうねりが押し寄せてくるようになってきた。その流れは今もGIGAスクール、学びのSTEAM化、大学入試改革…と進行中である。
 本書は、わが国が進めている教育改革に対して、「本当にそうなのか」「流行に踊った先に何があるのか」と問い直す10人の教育学者による批判、反論の書である。
 その切り口は「資質・能力ベースのカリキュラム」「個別化・個性化」「プロジェクト型学習」「インクルーシブ教育」「教師による『研究』」「外国語コミュニケーション」「エビデンスに基づく教育」「社会に開かれた教育課程」など多様だ。日本の教育現場をよく知っている学者たちが展開する論なので、それらの分析や指摘には、なるほどと首肯する点もある。
 だが、明快な解答を求めて本書を読むと、モヤモヤ感が残るだろう。今、学校は改革の流れの中で走り続けている。一度立ち止まって自分の頭で考えること、先人の残した教育遺産に教育の本質を見いだすことなどの問題提起は貴重だ。改革のキーワードについて課題も含めて理解を深めるとともに、全人教育を大切にしてきたわが国の実践を違う視点から捉え直すこともできるだろう。
(2200円 東洋館出版社)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

書評

連載