合理的配慮が目指す社会と学校教育に求められる取り組み
トレンド日本では障害のあるなしに関わらず、人と人が手を取り合い、その人を認めながら共に生きる共生社会の実現に向けて日々取り組まれています。その共生社会を実現させるためには障害のある人に対して合理的配慮が必要です。
また、障害者差別解消法では、国公立学校を含め、国や都道府県、役所、会社などの事業者が障害を理由として障害者を差別することを禁止しています。
学校内外においても障害のある子どもが、ほかの子どもと平等に「教育を受ける権利」を行使するために、ルールや慣行の変更、調整が欠かせません。ここでは、学校教育における合理的配慮と教職員に求められることについて解説します。
合理的配慮とは
合理的配慮とは、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。
行政機関および事業者が障害者から社会的障壁の除去を必要としている意思表明があった際、その実施に伴う負担が過重でないときは障害者の権利利益を侵害することとならないよう、必要かつ合理的な配慮(合理的配慮)を行うことが求められています。
合理的配慮を行うことによって目指すのは、障害による分け隔てのない社会の実現です。内閣府は、合理的配慮に関するリーフレットを公開しており、そこでも合理的配慮を行うことにより共生社会の実現を目指すことが記されています。
出典:内閣府『障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針』『合理的配慮を知っていますか?』
不当な差別的取扱いに当たる行為
障害者差別解消法では、不当な差別的取扱いが禁止されています。合理的配慮の実施においては、どのような行為が不当な差別的取扱いに当たるのかを理解しておくことが重要です。
たとえば、障害のある人に対して、正当な理由なく障害を理由にサービスの提供を拒否したり、サービスを提供する場所・時間を制限したりすること、または障害のない人に対して、適用しない条件を適用することなどは、不当な差別的取扱いに当たります。
不当な差別的取扱いに当たる行為例
・受付の対応を拒否する
・学校への入学出願や受験、入学、授業の受講などを拒む、または拒まない代わりに正当な理由なく条件をつける
・本人を無視して介助者や付き添いの人にだけ話しかける
一方、障害のある幼児や児童・生徒のために特別支援学級・特別支援学校で特別の教育課程を編成したり、合理的配慮を提供するためにプライバシーに配慮しつつ、障害者に障害の状況等を確認したりといった行為は不当な差別的取扱いには当たりません。
合理的配慮の例
合理的配慮は、社会にあるバリアを取り除くための何らかの対応を指します。具体的な例としてあげられるのが、以下のような行動です。
・段差がある場所でスロープを使って補助する
・手話がよく見えるように聴覚障害のある人の席を最前列に設ける
・図書館で借りた本を点字化したいという視覚障害者に対して貸出期間を延長する
いずれも障害者の負担が重すぎない範囲で対応することが求められます。仮に、負担が重すぎる場合には理由の説明や別の方法の提案により、障害のある人の理解を得られるよう努めることが大切です。
学校における合理的配慮と研修の重要性
学校教育に関しても合理的配慮の提供が重要です。
たとえば、障害者差別解消法では国公立学校での合理的配慮は法的義務、学校法人で合理的配慮は努力義務とされています。学校での合理的配慮に含まれるのは、学校施設の整備や障害種別に合わせた教材の確保などです。
学校における合理的配慮を充実させるためには、児童・生徒や教職員などの理解がまだまだ十分ではないという課題もあります。
合理的配慮のベースとなる校内の環境整備
学校における合理的配慮の基礎となるのが環境の整備や適切な教材の選択です。
校内設備においては、障害のある児童・生徒が安全で円滑に学校生活を送れるよう、スロープや手すり、エレベーターの設置といった校内のバリアフリー化が求められます。
同様に、ICTの支援機器や障害の種別やその特性に合わせた教材の確保・提供など、障害のある児童・生徒が十分に教育を受けるために大切な要素です。
研修・啓発の重要性
差別の解消や合理的配慮の提供を推進することが大切であるのと同時に、合理的配慮についての理解を深めることも重要です。
学校教育においては、教職員の理解度や指導姿勢が児童・生徒に大きく影響するため、教職員が障害に対する理解を深めることは欠かせません。
発達障害や高次脳機能障害、外部から気付きにくい難病についての理解に加え、子どもたちの間で不当な差別的取扱いが行われている場合にどのように対応するべきかなどを理解するためには、研修や啓発の実施が望ましいといえます。
合理的配慮で目指す「全ての子どもが平等な教育機会を確保できる社会」
合理的配慮は、負担が重すぎない範囲で障害のある人にとってのバリアを取り除き、共生社会の実現を目指す行為です。学校教育における合理的配慮では、校内環境の整備や障害種別に合わせた教材の確保などが求められます。
子どもたちとダイレクトに接する教職員の合理的配慮への理解度や姿勢は、学校教育においてだけでなく、子どもたちへの影響という観点でも大きな意味を持ちます。学校での差別の解消を図るには、教職員が研修や啓発を通して合理的配慮や共生社会についての理解を深めることが重要です。