変わる学校園の手洗い場 感染予防で自動水栓化
2面記事 手で握ってひねる蛇口が一般的だった学校の手洗い場が、手をかざすと水が出る自動水栓に変わりつつある。新型コロナウイルスの接触感染を予防するため、本年度内に学校園の工事を完了する自治体に加え、令和3年度予算に盛り込む自治体が出てきた。自動水栓の専業メーカーでは、学校向けの出荷が大幅に増えている。
神戸市は新年度から、市内にある約300の幼稚園や小・中学校、高校を対象に、屋内の手洗い場に自動水栓器具の設置を始める。市教委の担当者は「感染対策として非接触が有効であることから、全学校園での導入を決めた」と説明する。
石川県や福岡市も新年度、県立学校や市立学校で順次、自動水栓を導入する。
東京都内では既に各学校園の工事を進めている自治体もある。目黒区は昨年6月、区立学校などの手洗い場の自動水栓化を発表。昨年9月までに1校当たり約20台、計650台程度を整備した。
港区では本年度内に、幼稚園や小・中学校の全てのトイレの水栓を手回し式から自動式に取り替える。廊下の水栓は半数を自動化する。
港区立御田小学校では昨年10月上旬、トイレと廊下の水栓工事を終えた。廊下の各手洗い場は、一つの蛇口を残して全て自動水栓に。多くの児童が水筒を持参しているため、水分補給には特に影響はないという。もともと各階に1台あった冷水機を2台に増やし、現在のところ、児童が使う際は教員に申し出る体制を取っている。
同校の濵尾敏恵校長は「体育の授業や休み時間の外遊びの後、給食の前など、活動が大きく変わるときには特に手洗いを呼び掛け、校内放送を流すこともある。ハンカチで手を拭くところまで指導している」と話す。
コロナ禍で自動水栓の学校向け出荷台数も急増している。自動水栓の製造や販売を手掛ける(株)バイタル(長野県)では、断水せずに蛇口のパイプ部分を簡単に交換できる製品を提供する。例年の学校向けの出荷はゼロだったが、昨年は3千台を超えた時期もあるという。北海道から九州まで全国の小・中学校や高校の他、幼稚園や保育所、児童館などにも納入している。
学校での自動水栓の需要は年々高まっている。TOTOなどトイレ関連企業6社でつくる「学校のトイレ研究会」が令和元年11月から12月にかけて実施した調査によると、校舎の新築や改修を予定する128自治体のうち、複数回答で74%がトイレの手洗い場に自動水栓の導入を考えていることが分かった。
同研究会では「調査結果は新型コロナウイルス拡大前のデータ。自動水栓による手洗いの非接触化は、これまで以上に緊急性・重要性が求められる状況にある」としている。