「無敵」のマインドセット 心のブレーキを外せば、「苦手」が「得意」に変わる
14面記事ジョー・ボアラー 著
鹿田 昌美 訳
成長し続けるための6ステップ
著者は、スタンフォード大学の数学教育者。子どもたちは、「できない」「分からない」などに直面すると諦めてしまうことがある。しかし、脳には可塑性があり、何歳になっても変化し成長を続ける。だから心のブレーキを外し、神経回路の発達を促していけば現実を変えていくことができると、脳科学の根拠を踏まえて六つのステップを説いていく。
六つのステップは、
(1) 「『天賦の才』はないと知る」
(2) 「間違えたときこそ成長のチャンス」
(3) 「有害な『思いこみ』を捨てる」
(4) 「多次元アプローチで視野を広げる」
(5) 「スピードや暗記を重視しない」
(6) 「人とつながり、考えを共有する」
と、端的に表現されている。
日本の教育は、知識量や素早く解くことを求めがちだったが、いま「主体的・対話的で深い学び」による資質・能力を育む教育にかじを切っている。本書には、脳の働きを基にした、子どもの可能性や成長を大事にする教師や授業について見直すヒントが幾つも盛り込まれている。教師は子どものマインドセットに大きな影響を与えるから、成長を促す正しい声掛けを行いたい。また、脳の発達のためには、「速い遅いでなく、柔軟で深い思考」や「共同作業で学習を豊かにする」ことも大切であり、協働的な学びのつくり方について理解を深めることができる。本書に示されている具体例は実践への刺激となるだろう。
(1870円 ハーパーコリンズ・ジャパン)
(大澤 正子・元公立小学校校長)