教科書準拠授業動画で小学校英語をサポート リンク・インタラックと東京書籍が共同制作
8面記事ALT配置の民間最大手リンク・インタラックと東京書籍は、小学校5・6年生向けの英語学習動画「イングリッシュ@ホーム」を制作、家庭学習教材として販売を開始した。休校中の学習支援コンテンツを商品化したもの。音声やワークシートも付属しており、授業の予習・復習に活用できる。開発に込めた思いを担当者に聞いた。
休校中の家庭学習支援がきっかけ
小学校5・6年生向けの英語学習サポート動画「イングリッシュ@ホーム」の制作の背景は、昨年の新型コロナウイルス感染症拡大に伴う学校の臨時休業中にさかのぼる。
当時、文教関係各社がオンラインで活用できる動画や教材配信など家庭学習の支援に取り組み始めたころ、全国の自治体にも同様の動きがあった。小学校の外国語もその一つで、各地から東京書籍に「教科書を活用したい」との声が寄せられていた。
自治体へのALT配置事業を手掛けているリンク・インタラックにもさまざまな要望が寄せられていたことから、両社が初の協業により、お互いのもつ強みを生かして児童の家庭学習を支援するための動画を制作することになったという。
動画は「NEW HORIZON Elementary」5・6学年の3つのユニット(単元)について、各2種類、計12種類の動画を制作。東京書籍の指導者用デジタル教材の映像などをもとに、リンク・インタラックに在籍するプロのALTが、学習する活動や言語材料などをわかりやすく解説した。1本の長さは約3分。昨年5月18日より、両社のウェブサイトで無料公開した。
全単元で制作し商品化
2020年度は小学校で新学習指導要領の全面実施の年にあたる。小学校の外国語は教科化が始まる年でもあることから、児童のみならず、教員や保護者の中にも学習や指導に不安を抱えている人も多い。
学校再開後もこうした状況に対してサポートをするため、両社は教科書の全ユニットの授業動画制作を決定。「ワークシート」と「使い方に関する資料」など関連資料を加えた教材「イングリッシュ@ホーム」として商品化した。
各ユニットのコンテンツは大きく3つで構成。1つは「言語材料の定着」をめざす授業動画とワークシートで、学校の予習や復習に役立つ。2つめは「やり取り・発表」の動画とワークシート。各ユニットの言語材料を振り返ったうえで成果物を作成し、身近な人とやり取りができる。
3つめは「文字指導」の音声とワークシートで、積み上げ学習が必要な文字指導に役立つ。いずれも、教科書に沿った授業動画を視聴しながら4技能5領域をバランスよく学習できるよう工夫した。
保護者、教員向けの手引き「使い方と指導法」も「指導者・保護者用サイト」に収録した。コンテンツの指導法や使い方などをまとめたPDFデータ資料で、ワークシートの解答も閲覧できる。
プロのALTのノウハウを生かす
動画は、教室でALTの授業を受けているような臨場感を得られるよう工夫した。リンク・インタラック商品開発ユニットの大野絢子氏は、「実際の教室で教科書を使って授業を進めるとしたら、ALTはどのような動きになるか、子どもとどんなやり取りをして、子どもはどんな反応をするかを、これまでの経験から想定した」と話す。
出演したALTも「見ている子どもが、ここできっと笑うだろう」などと授業イメージを持ち、1人で視聴しても楽しく英語を学べるよう意識したという。明るい表情や聞きやすい指示、問いかけに子どもが答えやすいタイミング、親しみやすい例示など、実際の学校で、豊富な指導経験を持つALTならではのテクニックが生かされた形だ。
東京書籍英語編集部の岡本知之氏も「子どもに興味・関心を持たせつつ、内容をしっかり伝えていくALTの授業動画は、教科書からだけではイメージできない教え方や示し方を発見できる。ALTの指導力を実感できた」と振り返る。
個人のほか学校単位で購入可能に
「イングリッシュ@ホーム」は、電子教材のオンラインプラットフォーム「Lentrance(レントランス)ストア」で現在、クラウド配信で販売中。WindowsPC、タブレット、iPad、Chromebookに対応する。販売価格は児童1人1学年度分で税込み330円。単元ごとのばら売りはしない。
個人購入のほか、教育委員会や学校単位での一括購入も可能。いずれの場合もLentrance用の個人アカウントが児童一人ひとりに発行される。
視聴方法は、児童が配付されたアカウントIDとパスワードを入力し、Lentranceの「イングリッシュ@ホーム」のページにログインする。ワークシートの流れに沿って、該当する内容を選択すれば視聴したい動画がスタートする。
学校で購入した場合は、児童が記入したワークシートを回収して家庭学習の状況を把握するなど、多彩な使い方が想定できる。万が一、学校が休校になった場合も、教科書に沿った家庭学習に活用できる。
1人1台時代の新しい教材として
新たに教科化された小学校英語に寄せる児童や保護者の期待は大きい。「デジタル化が進み、小学校英語の教材・授業研究は多岐にわたる。児童の英語学習へのモチベーションを高められる教材として活用していただければ」(岡本氏)。「小学校英語で特に大切にしたいと思っているのは、子どもを英語嫌いにさせないこと。この教材を通したALTとのふれ合いが、中学校以降への学びへ向かう力や意欲につながれば」(大野氏)。
GIGAスクール構想で1人1台端末を全員が使えるようになれば、ドリルなど教材の電子化も進むことが考えられる。紙ベースの教材から、マルチメディアの電子教材へ。「イングリッシュ@ホーム」は、1人1台元年の先駆けとなる動画教材の一つだ。