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管理しない校長が、すごい学校組織をつくる!「任せる」マネジメント

14面記事

書評

住田 昌治 著
主体性引き出すヒントと哲学

 「部下の仕事を奪ってはならない」という管理職の鉄則は、「往年の名選手」(「できる」と自認する社員・教員)ほど難しいことかもしれない。かつての自分を基準にして部下を評価するのも人事考課の陥穽である。名選手が名監督になるとは限らないように、管理職(特に新任教頭)はプレーヤーとして活躍したい気持ちを早く成仏させなければならない。
 本書のタイトル「任せる」マネジメントは、思い切って「任せる」ことによって教職員の主体性(エージェンシー)を引き出し、ひいてはOECD Education2030が求める子どもたちのエージェンシーを育てることを狙いとしている。大人が「言う」ようにはならず、大人が「する」ようになるという子どもたちを持続可能な未来社会の創造者として育てるためには、学校全体の取り組み(ホールスクールアプローチ)の必要性が理論的支柱にある。
 「任せる」というのはもちろん「よきに計らえ」と丸投げすることではない。目指すベクトルが個々に異なる教職員の方向の擦り合わせのための具体的方策、教職員が本音を語り合えるような場づくり、教職員との対話における問いの発し方等々、校長としての経験値に裏打ちされた数々の役に立つTips・ヒントが惜しげもなく披露されている。だが、それらはスキルではなく、哲学・アートなのだということもうかがえる啓蒙書である。
(1980円 学陽書房)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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