「勉強は楽しい」が…小4理科、平均点低下 国際数学・理科教育動向調査
1面記事中2、生活とつなぐ意識低く
昨年2月から3月にかけて小学4年生と中学2年生を対象に実施された「国際数学・理科教育動向調査〔TIMSS(ティムズ)〕」で、小4理科の平均点が4年前の前回調査から低下したことが8日、分かった。一方、「理科の勉強は楽しい・得意だ」と答えた児童の割合は増加した。算数・数学、理科ともに得点は高い水準を維持しているが、特に中学生で「勉強は楽しい」「日常生活に役立つ」などの意識は依然として国際平均を下回っている。
調査は国際教育到達度評価学会(IEA)が児童・生徒の算数・数学、理科の到達度を国際的な尺度で測定しようと、1995(平成7)年から4年ごとに実施している。
7回目の昨年調査には、小学校は58カ国・地域、中学校は39カ国・地域が参加。日本では小学校147校の約4200人、中学校142校の約4400人が対象となった。
参加国中の順位は、小学校算数で5位、理科で4位、中学校数学で4位、理科で3位。平均点が中学校数学で8点上がる中、小学校理科で7点下がった。小学校理科では、砂漠の絵に描かれている生物や無生物を記述する問題で正答率が特に低く、国際平均を8ポイント下回った。
記者会見した文科省の担当者は「算数・数学、理科ともに平均点が高い水準を維持できているのは、旧学習指導要領で基礎学力や思考力・判断力・表現力を育成できた成果といえる。小学校理科の平均点の低下はしっかり受け止めて原因を分析していきたい」と話す。
児童・生徒への質問紙調査では、「勉強は楽しい」「得意だ」と答えた割合が、小学校理科のみで国際平均を超えた。それぞれ92%(国際平均86%)、86%(同73%)に上っている。
中学生で勉強が「日常生活に役立つ」と回答した割合は、数学で73%(同81%)、理科で65%(同84%)。各教科を使う「職業に就きたい」と答えた割合は、数学で23%(同49%)、理科で27%(同57%)と、いずれも国際平均より低かった。
調査への回答方法は今回から筆記型に加えてコンピュータ使用型も選択できたが、日本は筆記型で参加した。調査当時、学校では情報端末やインターネット環境の整備が十分ではなかったため。各教科で上位の成績を収めたシンガポールや韓国など、東アジア諸国・地域はコンピュータ使用型を選んでいる。
調査結果を踏まえ、文科省は今後の施策として、
・1人1台端末の活用による児童・生徒へのきめ細かな指導の実施
・理科の観察・実験の充実を図るため設備の整備やアシスタントの配置
・小学校高学年の理科や算数などに教科担任制の導入
―を挙げている。
情報選び、吟味する過程大切
川村 康文 東京理科大学教授(科学教育)
小学校で理科の得点が前回より下がったが、それほど大きな問題ではない。内容領域にかかわらず、記述式の正答率が相変わらず低いことの方が問題だ。公開問題で、絵に描かれている生き物・生き物ではないものを見つけ、書き出す問題の正答率が低かった。恐らく一つずつ書くならできたはずだが、二つ書くことが求められたため低かったのではないか。
これまで試験問題は、回答する上で不要な情報を入れないように作られた「親切な問題」が多かった。だが大学入学共通テストのように、回答者が問題文から情報を選び出し、内容をそしゃくし答えるプロセスを大切にすべきだろう。
理科指導には、コロナ以前は好景気で、理系人材が小学校に集まらなくなっている構造的問題もあった。小学校教員の理科指導の力を底上げするのか、教科担任制で専門の教員を全国的に配置するのか。指導体制の在り方を考えていくことも必要だ。