知のフィールドガイド 異なる声に耳を澄ませる
14面記事東京大学教養学部 編
「未知」や「摩擦」がキーワードの特別講座
幅広い知識を持つことは大切なことである。それはさまざまな「想像を生み出す力の原動力」になる。では、私たちは、どこで、どのようにその力を身に付けているのだろうか。
この「教養」という素地を耕し、豊かな知の大地にすることが、その後の「伸びしろ」になる。評者は小学校の教員であったが、算数の授業をやりながら国語になり、理科へ飛んだり、野外学習へと連れ出し本物に触れさせることがよくあった。その仕掛けは、大学でも頻繁に行っている。歴史記念館や駅に集合、隣接する畑での草取りをしながら、多様な生徒指導の在り方を教えるなど、先入観を捨てて、後に役立つ、異なるものに触れさせたことが有益であったと再確認させていただいた。
そのうらやましい取り組みを「高校生と大学生のための金曜特別講座」として東大教養学部が行っている。その抜粋を「現代の未知に対峙する」「摩擦を読み解く」「常識を穿つ」として紹介している。実に読みやすく、深く、論理的思考力と先進的教養を身に付けるためのトレーニングができる。読後、教養力が確実にアップしていることは間違いがない。
「企業に就職する」と、断言していた学生が、教育実習から帰って「先生、私やっぱり教師になります。お願いします」と歓喜して報告をしてきた。「無知の知」とはこのことだ!
(1980円 白水社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)