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AI時代の教師・授業・生きる力 これからの「教育」を探る

12面記事

書評

渡部 信一 編著
8人の研究者が闊達な議論展開

 本書は、今の小学生が大学を卒業し社会に出る10年後の日本社会を視野に、教育現場を考えることを趣旨としている。Society5・0時代を生きる子どもにとってICTを基盤とした先端技術の活用は必須。今年、GIGAスクール構想に係り1人1台端末と高速ネットワーク環境整備が進められ、ICT教育が加速している。
 では、このAI時代に教育はどうあるべきなのか。本書では「AI時代の『教師』『授業』『生きる力』を探る」とし3章構成で論述。
 特筆すべきは、8人の著者によるディスカッション。専門的に研究されている立場からの意見は興味深く、問題点や改善点を忌憚なく闊達に展開。対話に参加しているような感覚で読め、示唆に富む言葉が心に響く。幾つか紹介したい。

 教師が「人として共感できる存在」であることが大切
 教師自身がどの教科のどの段階で使うかマネジメントできることが重要
 「不便益」の概念が大切。あまり便利すぎると生きる力は育成できない
 本来人に備わっているはずの直観力をテクノロジーの導入によって退化させることのないように

 ―どれも心に刻んでおきたい言葉だ。
 今後ますますAIは生活・社会に普及浸透していくだろう。その中で、今まで以上に教師の役割は重要であり、教師にはより高い見識が求められるという言葉に励まされる思いがした。タイムリーな書である。
(2860円 ミネルヴァ書房)
(藤本 鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事)

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