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子どものそばにすべてがある

16面記事

書評

平松 義樹 著
言葉にならない言葉に耳傾けた実践

 「教師は、常に子どものそばにいて子どもの言葉にならない『言葉』を聴き取る精度のよい『聴診(心)器』をもって実践をしていかなければならない」―著者の言葉に心を打たれる。この書名は、「聴診(心)器」を持って実践を推進した愛媛大学教育学部附属中学校での合言葉。
 著者が、「問い、考え、行動する」43年間の教職生活を「教育実践学」としてまとめた本書は、六部で構成されている。
 子どもたちの置かれた状況は深刻化の一途であるが、子どもを救うことのできる最後の砦は「教師」しかいないと考え、第一部から第四部まで教育の光の世界をつづる。愛媛新聞のコラムに掲載された「平成坊っちゃん物語」を中心とした教師の歩みには、「確実なる理想の教育像」を描いてほしいとの願いが込められている。
 第五部にある八話のエッセーは、現在の教育課題そのものであり、「教育とは学習を援助する営みである」とする著者が、先人の言葉も引用しながら、授業とは何か、教育とは何かを考える視点を与えてくれる。第八話「いじめの未然防止のための『教員文化』の創造と課題」では、「学校が子どもの心に迫る意識を持っているか」「一人ひとりの教師が本当に子どもを看ているか」と問い掛ける。本書を手にし「教育の理想像」を考えたい。
(1980円 東京書籍)
(伊藤 敏子・仙台市教育局学びの連携推進室専門員)

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