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PISA型読解力 論理的な認識に導く言葉の力を

14面記事

書評

教育フォーラム56
梶田 叡一 責任編集
日本人間教育学会 編
2018年調査踏まえ具体的な改善提言

 OECDが2003年に実施したPISA国際学習到達度調査の結果が発表された時、「読解力」の得点があまりにも低く、「PISAショック」として教育界を揺るがし、当時の「ゆとり教育」の風潮が批判され、「言葉の力」を土台にした「確かな学力」の育成へカジが切られた。以後2回にわたる学習指導要領改訂でもこの点に配慮がされ、学校現場でも「読解力」「思考力」の育成を念頭に置いた授業改善が図られていったはずだった。
 しかし、2015年のPISAでも、日本の子どもの「読解力」の弱さが浮上し、今回発表の「PISA2018」では、さらに下がった。中国(北京・上海・江蘇・浙江)の子どもたちが「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3領域でトップ、同じく2位はシンガポール、3位はマカオ。日本は「読解力」で15位、「数学力」で6位、「科学力」で5位だった。なお、かつて世界1位としてクローズアップされたフィンランドは、「読解力」以外は日本より順位が下になった。
 本書は、改めて「読解力」「思考力」育成の課題について取り上げて考察・提言。巻頭論文で梶田叡一氏は、「各教科の教育の在り方の全てにおいて、特に『言葉』の扱いと、その認識や思考や判断との関連づけについて、改めての問い直しが迫られている」とし、「論理構造の明確な認識と思考と表現の力の育成」の方策を具体的に提示しており必見といえる。
(2640円 金子書房)
(矩)

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