教育効果を可視化する学習科学
16面記事ジョン・ハッティ、グレゴリー・イエーツ著
原田 信之 訳者代表
最新研究基に実践の意味問い直す
あなたは、「自尊感情は人間の性質の中心であり、丁重に扱われるべき重要なコアである」という考えに賛成(反対)ですか? また、そう判断する明確な根拠をお持ちですか。
本書は、優れた教員であればあるほど陥りがちな、学習指導に関するさまざまな問題を、最新の研究成果を使って可視化し、「あなたの考えは間違っていませんか?」と鋭く問い、日々の教育実践を確かなエビデンスに基づいて問い直すことを提案していく。
3部構成で、全31章からなり、各章末には「学習ガイド」として、10問前後の質問が付されている。その質問は、どれも教師が日頃信念のごとく抱いて、日々の実践にまい進している内容であるだけに、根底を揺さぶられる問題ばかりである。
評者も、教職にあった時、疑いもなく信じ、自身の指導をそうあろうと悪戦苦闘した日々の教育的営みに対して、「それは本当に正しかったと言えるのか? そのエビデンスは?」という問い掛けの連続で、最後には、自分の浅薄さを白日の下にさらされる恐怖すら感じる。本書が語り掛ける「あなたが日々信じて疑わない教育実践の成果は正しく見えていますか? その実践理論は科学的に証明されていますか?」という問いを、日々、自分自身に突き付け、研究・実践を検証しながら積み重ねることの重要さを改めて考えさせられる。
(5940円 北大路書房)
(新藤 久典・文部科学省学校業務改善アドバイザー)