災害時の避難所における快適なトイレ環境の確保に、下水道に直結する災害時用トイレを整備
10面記事「防災貯留型トイレシステム」を使った仮設トイレ(柏市立松葉第一小学校)
千葉県・柏市
大規模災害時には電気や水道が止まることで、水洗トイレが使用できなくなる可能性がある。とりわけ多くの地域住民を受け入れる避難所では、生活や健康に深刻な影響を及ぼすことや衛生環境の悪化が懸念されており、トイレ事情はとてもストレスが掛かるため災害時のトイレ機能の確保が急務になっている。こうしたなか、全国の学校施設などの避難所において整備が進められているのが、下水道直結の衛生的な災害時用トイレを設置できる「防災貯留型トイレシステム」(積水化学工業)だ。ここでは千葉県・柏市での事例を紹介する。
衛生的な水洗トイレに近い環境を確保できる
柏市では地域防災計画のもと、下水道施設の被災対策として、仮設トイレや簡易トイレ、非常用トイレ袋を備蓄するほか、柏市教育委員会と連携を図りながら、下水道が整備されている避難所(小学校30校)に2024年度までに30箇所(61基)の災害時用トイレの整備を進めている。
「避難所に快適なトイレ環境を確保するため、災害時にも下水道に直結し、水洗トイレに近い環境を確保できる『防災貯留型トイレシステム』を整備することにしました」と語るのは、下水道維持管理課の柳氏だ。
このトイレシステムは、避難所にあらかじめ設置した接続桝の上に便座と建屋を設置。地下には貯留管を埋設し、貯留管へプールの水などを貯水して利用する。水を貯める事により臭気発生を軽減し、便が硬化することを防止。1日1回溜まった排泄物を下流の下水道本管へ一気に放流する仕組み。しかも、貯留弁がマンホールと一体化しているため地震に強く、下水道の本管が破損した場合も仕切弁を閉じ一定期間貯めておくことができるといった利点を持つ。
「まずはライフラインの復旧が見込める3日間をどう乗り切るか。その意味で、本システムで災害時用トイレを2基(1基あたり100人利用)設置すれば、市が想定する1避難所・約150人の収容人数に対応できるとともに、その他の備蓄トイレと合わせて活用することで快適なトイレ環境を維持することができると考えます」
利用者の目線に立った使いやすい仮設トイレを
設置場所については、避難所となる体育館及び水源となるプールの近くとし、組み立て式の建屋については、「事前の設置デモでテント式だと夜間のプライバシーを懸念する声もあったことや車いす利用者が使いにくいことが分かったことで、パネル素材の建屋としました。また便座は、衛生面を考慮し簡易水洗台座を採用しました。かつての被災地では、利用者の声を反映し、落下式から水洗式に変更していると聞いています」と話すように、利用者の目線に立ち配慮している。居住区から災害時用トイレへの導線についても、車いす利用者でも使い易いよう、段差解消を図るよう通路も併せて整備している。
災害時用トイレは、昨年度には市立松葉第一小学校、市立松葉第二小学校に設置済である。
災害時には、避難所を運営する方がこの建屋及び便座を設置・撤去するため、いざというときに誰でも速やかに設置・使用できるように、8月に両校で設置デモを行った。なお、現在、設置や日常管理などの利用方法についてマニュアルを作成中。「これをもとに、今後は避難所ごとに設置訓練等を行ってもらい、災害時の大きな教訓になっているトイレの確保に備えてほしい」と期待した。
仮設トイレ設置以前