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教えない「教える授業」 すぐれた教育の実践に学ぶ

14面記事

書評

佐久間 勝彦 著
真の「深い学び」へ温故知新の勧め

 「教える」と「教えない」、この相反する言葉に著者の深い思いが込められている。「主体的・対話的で深い学び」が今後の学習指導の方向性として示され、教師の役割は教授ではなく、ファシリテーターやコーチとも。しかし、著者は、教師が教えることを控えて、豊かな学びは育つのだろうかと疑問を投げ掛ける。いまコロナ禍の学校現場では、対面的な学習活動や直接的な接触が制限されている。真面目な教師ほど、子どもたちに学びを委ねていて「深い学び」や「学習の質」が実現されるのかと授業づくりに悩んでいる。
 著者は、授業形態を変えるという薄っぺらな実践でなく、斎藤喜博氏らの追究するために必要な知識は的確に与え、問いを投げ掛け、考えを受け止めるという教育実践に貪欲に学んで、真の「主体的・対話的で深い学び」を実現してほしいと「温故知新」を提案。そして、指導技術を重視する授業づくりではなく、仲間とも自分とも対話を重ね、学びを深める授業の創造に努めてほしいと期待している。
 本書はまた、さまざまな分野の人々の紡ぐ「ことば」に触れて心を豊かにする優れたエッセー集でもある。著者の感性と知性と人を慈しむ心にすがすがしさを覚える。熱意ある若い教師こそ本書を手に取り、紹介されている珠玉の言葉に触れて心をふるわせ、内なる人間愛を育んでいってほしい。
(2200円 一莖書房)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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