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デジタルで読む脳×紙の本で読む脳「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる

14面記事

書評

メアリアン・ウルフ 著
大田 直子 訳
両媒体の特質押さえた教育を説く

 言葉が詰まった文章や長い報告書などを読むことが苦手になったと感じている。本書によれば、デジタル読字に脳がなじんで認知忍耐力が低下し、情報を速く処理しようと、斜め読み、飛ばし読み、キーワードを拾う読み方に陥っているということだった。
 読む脳は遺伝子に組み込まれていないので学習していく。この脳の可塑性で、デジタル読字によって脳が変化を起こしているという。紙媒体の読みは自分の内なる背景知識と結び付けて解釈していくので、批判的思考や類推、想像、共感のような認知プロセスを経る。しかし、紙の本を読まず、電子機器で短文や画像を多用して済ます若者たちに共感力が低下する傾向が見られるという。このことは異文化と共生していくこれからの社会にあって、もっと重視していく問題であろう。
 著者は、デジタル媒体なしの社会に後戻りはできないから、子どもたちに印刷媒体とデジタル媒体の両方、つまりバイリテラシーを意図的に育てるべきという主張。特に、幼児期の読み聞かせや5年生までの紙媒体による深い読みができる力の育成が大切だという。
 障害のある子どもにとってデジタル機器は有力な学習用具であり有効に活用されるだろう。教師たちには印刷媒体と電子媒体それぞれに起きる読む脳の特質を押さえながら、個を意識した授業づくりを進めていってほしい。
(2420円 発行 インターシフト、発売 合同出版)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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