日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

学校保健安全法の目的と新型コロナウイルスに係る学校での対応

トレンド

特集 教員の知恵袋

 2020年3月、新型コロナウイルス感染症の対応として全国の学校で臨時休業の措置が取られました。今後も第2波、第3波に備えた警戒が必要となるのはいうまでもありません。また、それらに伴い注目されているのが、今後学校での欠席や出席停止をどのように扱うかということです。

 文部科学省によると、学校での出席停止や臨時休業は学校保健安全法に基づいて対応することになっています。ここでは学校保健安全法が何を目的とした法律であるか、また新型コロナウイルスに係る出席停止の対応について解説します。

学校保健安全法の目的

 学校保健安全法とは、学校における児童および教職員の健康保持と増進を図り、安全な環境での教育活動を実施することを目的とした法律です。

 この法律では、学校での安全管理に必要な事項が定められていますが、大きくは「学校保健」と「学校安全」の二つに分けて考えられます。

学校保健の事項とねらい

 学校保健安全法の第二章にあたる学校保健の項目で定められているのは学校の管理運営や健康相談、健康診断、感染症の予防等に関する項目です。

学校設置者の責務と衛生管理

 学校保健安全法の第四条から第六条では、学校の設置者の責務や学校の衛生環境について定められています。

 児童や教職員が心身の健康の保持・増進を図るためには学校の設置者による安全な環境の確保や事故・災害が発生したときの適切な対処が欠かせません。児童や教職員を対象とした健康診断ならびに環境衛生検査、児童への指導や保健に関する計画の策定・実施も学校の設置者の責務です。

 また、文部科学省は学校における換気や採光、照明、保温、清潔保持など児童および職員の健康を保護する上で維持することが望ましい学校環境衛生基準も定めています。

児童と教職員を対象とした健康診断

 学校保健の事項では、教育活動の推進に不可欠な健康診断について明記されています。就学前の健康診断については学校教育法の規定によって定められており、各市町村の教育委員会は当該市町村の区域内に住所を所有するものの就学にあたって健康診断を行わなければなりません。

 また、学校においては通信教育を受ける生徒を除いて、毎学年定期に児童および教職員の健康診断を行い、さらに必要であれば臨時での健康診断も行うものとされています。各市町村の教育委員会や学校の設置者は、健康診断の結果に基づき、疾病の予防処置や治療指示、運動や作業の軽減などの適切な措置をとらなければなりません。

感染症予防と出席停止

 学校保健安全法の第十九条では、学校感染症による出席停止について記されています。感染症にかかっている・かかっている疑いがある・かかる恐れのある児童がいる場合、校長の判断で出席を停止させることが可能です。

 また、学校設置者は感染症の予防として必要があれば、学校の全部または一部の休業を実施できます。

新型コロナウイルスに関する対応

 学校に新型コロナウイルスに感染した、または感染の疑いがある児童がいる場合はどのように対応すべきなのでしょうか。

 文部科学省が発表したガイドラインによれば、児童が新型コロナウイルスに感染したと判明した、または児童が感染者の濃厚接触者に特定された場合、学校保健安全法第十九条の規定に則り、出席停止の措置をとります。また、児童ならびに同居の家族に発熱等の風邪の症状がみられる場合にも、同条に基づく出席停止の措置が必要です。

 さらに、今後保護者から「感染が不安なため子どもを休ませたい」という相談が寄せられることも考えられます。その場合、感染の可能性が高まっているという保護者の考えに合理的な理由があると校長が判断すれば、指導要録上「出席停止・忌引等の日数」として記録し、欠席扱いにしない、といった柔軟な対応も可能です。

児童の安全確保を目的とした学校安全

 学校保健安全法の第三章では、学校安全についての事項が明記されています。

 学校安全に関する学校設置者の責務は児童に事故や加害行為、災害等による危険が生じないよう防止することです。同時に、危険や危害が生じた場合に適切な対処ができるような学校設備、管理運営体制の整備充実、必要な措置を講ずるよう努めることが求められます。

 児童の安全確保のためには、学校施設や設備の安全点検のほか、通学を含めた学校生活や日常生活における安全指導、さらには教職員の研修、学校における安全に関する計画の策定と実施が重要です。日常生活における安全指導には、児童の通学時も含まれます。

適切な予防と対処により児童の健康と安全を守る

 学校保健安全法は、児童および職員の健康保持や増進、安全な環境での教育活動の実施を目的とした法律です。定期で行う健康診断や感染症の予防、児童の学校生活や日常生活の安全指導など、児童が安心して教育を受けるための事項が定められています。

 学校保健安全法で定められたルールに従うのはもちろん、新型コロナウイルスに関する出席停止や臨時休業等を含め、柔軟に判断し対応することも必要です。

 安全で衛生的な環境の確保や感染症の防止と併せて、トラブルや災害発生後の適切な対処によって児童や職員の健康と安全を守ることが求められます。

特集 教員の知恵袋

連載