少子化によって進む学校の統廃合~義務教育学校や複合化・共有化による効率的な施設整備を~
18面記事学校数が10年で1割減少
少子化によって公立小中学校の学校数及び児童生徒数は、近10年間でいずれも10%減少した。また、1市町村に1小学校1中学校という市町村も13%あり、学校の統廃合が推進されている。
国が定める適正な学校規模は、学級数が、おおむね12~18学級で、通学距離が、小学校が4km以内、中学校が6km以内、かつ通学時間が1時間以内となっている。
したがって、文部科学省ではこれを下回る場合は統廃合の是非などを検討するとともに、通学に無理が出る場合は小規模校のデメリットを解消する対策を実施するよう求めている。子どもの数に比べて学校数が多くなると建物の維持費や教員の人件費などの財政負担が大きくなるからで、小規模校が減ればそのぶん合理化できるからだ。
小規模校のデメリットとは
ほかにも小規模校のデメリットとしては、学校の防災機能や教育機能の質的改善に遅れが生じること。学校運営上の課題として、クラス替えできず人間関係が固定化、集団行事の実施に制約、部活動の種類の限定、授業で多様な考えを引き出しにくいことなどが挙げられる。また、児童生徒への影響として、社会性やコミュニケーション能力が身につきにくい、切磋琢磨する環境の中で意欲や成長が引き出されにくい、多様な物の見方や考え方に触れることが難しいなどが指摘されている。
但し、登校範囲が広がれば、子どもたちの通学事情が悪化することも当然考えられる。文部科学省ではスクールバスの整備も視野に入れているが、それではかえって財政負担が大きくなる場合もあり、統廃合には地域の実情も加味して行う必要がある。
近隣自治体で1つの学校を設置
その上で、こうした自治体における統廃合の方策として、将来的な財政負担の軽減と魅力ある学校づくり、あるいは小規模校の課題を緩和する方策として進められているのが、小中一貫校(義務教育学校)や他の公共施設との複合化・共用化だ。
たとえば、5つの小学校を統廃合した信濃町立信濃小中学校は、9年間のうち5年目以降は教科担任制を採用することで、授業で「知りたい」「やってみたい」「できるようになりたい」と感じる生徒が増加したり、下級生の存在による高学年生徒の社会性が向上したりする効果があったという。
また、児童生徒数が減少する近隣自治体で1つの組合立学校を設置するケースも増えており、福岡県吉富町外一市中学校組合立吉富中学校は、吉富町立吉富小学校と豊前市立三毛門小学校を卒業した子が進学する学校として開校した。このような組合立学校は、現在までに小学校11校、中学校26校、高等学校3校が生まれている。
学校プールの共有化で財政を削減
他の公共施設との複合化は、施設機能の高機能化・多機能化によって児童生徒や地域住民の多様な学習環境の創出、公共施設の有効活用、財政負担の軽減等につながることが期待されている。新興住宅地における学校施設の整備を、その他の公共施設と併せて行った例が、埼玉県吉川市立美南小学校だ。同校は老人福祉施設、子育て支援センターとの複合施設となっており、各公共施設を単体で整備するよりも財政的な負担が軽減された。
また、埼玉県志木市立志木小学校は公民館と図書館を複合化。児童と地域の人々の学習機会も向上し、日常的に公共施設を利用したり、地域の人々と交流したりすることで、自然と社会性が身につくようになったという。
一方、共有化の例では茨城県下妻市の学校プールの統合がある。ここでは、不具合が起きるたびに修繕を行っていた11校のプールを5校に集約化することで、今後30年間で4・5億円も削減できるとしている。
こうした背景には夏季に限られる各校のプール稼働率が低いことがあり、プール施設のあり方について検討する必要があったことが挙げられる。なお、プールを保有維持する5校(基幹校)については、稼働率や老朽化の度合いにより学校を選定した。