分散登校+オンライン学習 新しい授業形式で緊急事態に備え
12面記事茨城県つくば市
緊急事態宣言の解除とともに、学校現場も段階的に再開してきているが、新型コロナウイルスの第2波、第3波も予想され、いつまた自宅での学習を余儀なくされるか分からない。オンライン学習の体制の整備など、各学校現場では緊急事態への備えが急務となっている。そんな中、茨城県つくば市は分散登校をスタートした5月22日に、みどりの学園義務教育学校で、教室での授業に、自宅学習の児童生徒もオンラインで参加する新しい形式の授業を試行した。つくば市はこの新しい授業形式を全小中学校に拡大し、学校が再び休業となった場合でも学習の継続を図る考え。
端末700台を貸し出し環境整備
小学校でのプログラミング教育をはじめ、教育現場での先進的なICT活用にこれまで取り組んできたつくば市とつくば市教委は、2016年に学校家庭学習支援システム「つくばチャレンジングスタディ」の運用を開始。小中学校の学習教材を多数掲載している。タブレットやPCで児童生徒が誰でも利用可能で、AIがレスポンスしてくれるため、「休業期間中も各家庭で活用され、学習の不安の解消につながっている」(同市総合教育研究所の中村めぐみ情報担当指導主事)という。
同市は5月の補正予算で、オンライン学習に対応できる環境がない児童生徒に端末を貸し出す事業を創設。すべての児童生徒が1人1台でオンライン学習できる環境を整備して、教室の学習とオンライン学習を組み合わせた新しい授業形式を、全小中学校に広げていく考えだ。同市が4月に実施した、家庭におけるインターネット利用状況調査の結果によると、「インターネット環境がない」と回答した家庭が、小中学生全体の3%だった。同市の小中学生が約2万2000人のため、GIGAスクール構想で児童生徒1人1台を整備する予定の端末のうち700台を、新型コロナウイルス対策のために前倒しで調達し、自宅にパソコン等の端末がない児童生徒に貸出しする。
みどりの学園義務教育学校で試行した授業では、すでに同市で導入している学習支援ソフト「スタディノート」と、オンライン会議「Zoom」を使用。教室の生徒も1人1台端末を持って授業に取り組んだ。スタディノートは端末に書いたものを、教員が指導者用の端末で確認できるため、児童生徒1人1人の理解度などを把握する手助けになる。Zoomを使ってホームルームを行うことで分散登校でも児童生徒の健康観察等も行える。
オンラインで教室外から参加している児童生徒も、教室で授業を受ける児童生徒と同様に問題を解いたり、意見を述べること等が可能になる。そのため、新型コロナウイルスの感染が再び拡大した場合でも休校せずに、分散登校にしてオンラインと組み合わせて授業を実施することができるだろう。また、スタディノートとZoomの組み合わせでは、顔を出さずに授業に参加することも出来る。各地でオンライン学習を進めた学校からは、不登校の児童生徒が積極的に参加したことが成果の一つとして報告されている。同市の新しい授業形式を進めることで、不登校の児童生徒も通常の授業に参加できるケースが増えるかもしれない。