Zoomで遠隔授業 学習進むことに生徒や保護者に安心感
9面記事青森市立東中学校
新型コロナウイルス感染拡大に伴う学校の臨時休業に伴って、インターネットを使った遠隔授業で児童・生徒の学習時間を確保する動きが広がっている。青森市立東中学校(角田毅校長、生徒数278人)では、オンライン会議システム「Zoom」を利用した双方向の遠隔授業を実施。休業期間が長引く中、学習が進むことによって、生徒だけでなく保護者にも安心感が生まれている
同校と学区内の3つの小学校は昨年度、2in1PCや学習ソフトを利用する環境が整い、児童・生徒に個人IDを割り振っている。同校によると、現段階では全ての生徒の家庭で遠隔授業を実施できる環境が整っているという。年度初めから遠隔授業についての説明をメール等で丁寧に繰り返し、試行段階を経て、さらに詳細調査を実施し、端末等を貸し出すなどの対応をしている。
同校は4月6日から休校となったことから、まず、2、3年生で1日2コマの遠隔授業を実施。4月8日からは1年生でも試行的にスタート。1時間目は2年生、2時間目は3年生、3時間目は1年生というように時間をずらして各学年1日3コマずつの遠隔授業を行った。
遠隔授業の1コマの長さは30分に設定。これはZoomの無料部分(40分)で授業を行うためで、生徒たちがZoomのミーティングルームに入室する時間に10分使用するとした。また、「生徒の集中力を考えると30分くらいが限度だろう」と考えた面もある。
Zoomは、PC内蔵カメラで参加者の顔や様子が分かることに加え、パワーポイント等の資料を画面で共有できるほか、サイン機能で拍手等を送ったり、チャット機能で感想を収集したりすることもできることから、同校の遠隔授業に採用したという。
遠隔授業への参加の仕方やルールは、「遠隔授業の約束」としてまとめ、事前に生徒たちに示している。
例えば
・遠隔授業を家族に知らせ協力を得る
・部屋を明るくして顔が見えるようにする
・後ろに映り込むものを確認する
・テレビの音声など不要な音が入らないようにする
―などと呼び掛け、「教室内ではなく、学校と地域がつながっていることを意識し、発言やチャットの書き込みには責任を持ちましょう」と注意を促している。
生徒たちは、学校指定のジャージを着用して、名簿番号と名前(フルネーム)でZoomに入室する。体調不良などで欠席する場合は、保護者が学校に連絡する。
授業中は名簿をチェックする教員も別途配置し、授業者の負担を軽減している。また、生徒の表情を確認するため、大型ディスプレーを用いて2画面にし、片方で生徒の表情を映している。こうして、授業中の生徒の観察や反応等から生活の様子を話題にするなど、生徒理解・指導にも努めている。
同校では、遠隔授業と合わせて、学校で利用しているドリル教材を各家庭の端末で利用できる「ラインズeライブラリアドバンス」も導入。生徒には各教科の教員が「ぜひここだけはやっておいてほしいところ」を課題として提示している。
遠隔授業4週目となった4月27日以降は、学校のインターネット回線の他に、モバイルルーターを各学年に1台配備することができたため、各学年とも1日6コマの授業を実施。8時10分からは朝学活(10分間)、6時間目は学年タイムとするなど、通常の時間割とほぼ同じように計画した。5月5日には青森市から学校再開の指示が出たことから、同校では5月11日以降は学年ごとに登校日をずらす分散登校とし、登校しない日の遠隔授業と組み合わせたカリキュラムで授業を進めている。
同校では遠隔授業実施に当たって、授業者がZoomに慣れるまでに、全学年スタッフでサポートを行い試行錯誤したという。また、生徒の通信環境の差異や端末の機能に応じて、授業者が工夫して進めたり、個別に電話・家庭訪問したりして授業記録の提供等を行っている。学習が進んでいることに対して、「生徒ばかりではなく保護者も安心感を持っている」ようだ。昨年度、不登校傾向にあった生徒も授業に参加できていることも一つの成果と言えるだろう。
一方で、生徒一人一人の学習内容の定着度が把握しにくいことが遠隔授業の課題だ。遠隔授業を進めていった場合、生徒の「評価」をどのようにするか。eライブラリーによる個別最適化学習を並行して実施しているが、「生徒の理解度や定着度の詳細な把握が現在の課題」だとしている。