新型コロナ、子どもと学んで 医療関係者が教材や冊子公開
10面記事新型コロナウイルスの正しい情報を伝えようと医療関係者らが児童・生徒に向けた教材などを作って発信している。学校再開後の授業やオンラインの教育活動の中で利用できそうだ。
日本赤十字社は4月、小・中学生向けの教材「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう!~負のスパイラルを断ち切るために」をホームページで公開した。感染症を正しく知り、子どもが心や体の健康を保つためにどうしたらよいかを考えることを目的とした。
教材ではウイルスには「負のスパイラル」を生む「3つの感染症」の顔があると紹介。「病気」「不安や恐れ」「嫌悪・偏見・差別」を挙げる。
そして「不安や恐れは人間の生き延びようとする本能を刺激」し、「ウイルス感染にかかわる人や対象を日常生活から遠ざけたり、差別するなど、人と人との信頼関係や社会のつながりが壊されてしまう」と説明する。
その上で「不安や恐れ」に振り回されないためには「気づく力」や「聴く力」などを高めることが必要だと訴える。悪い情報ばかりに目が向いていないか、趣味の時間や親しい人との交流が減っていないかを振り返り、できるだけ普段と変わらず生活を続けることを考えようと呼び掛けた。
岡山大学は4月上旬、知識流動システム研究所と小学生向けの教材「新型コロナウイルスについていっしょに考えよう!」を公開し、全国の自治体や学校などに配布や活用を求めている。
教材は
(1) コロナウイルスってなに?
(2) どのような症状があるの?
(3) どうやって感染するの?
(4) 感染をふせごう!
(5) ウイルスとたたかっている友だちや家族を応援しよう!
―の5項目。感染の仕組みや症状を載せた上で、集団感染を防ぐために「近くで大声で話すのをやめよう」「体育のときなども友だちとくっつかないようにしよう」などと学校生活で気を付けなければいけないことを紹介した。より詳しく解説した「もっと知りたい人のためのQ&A」の児童版・大人版とともに同研究所のホームページに公開している。
教材を監修した同大学の狩野光伸教授は「新型コロナウイルスは、まだ分からないことも多い。感染を防ぎながら、どう過ごせばよいのか、子どもと一緒に大人も考えてほしい」と話す。
また、学校再開後の感染症対策については「これまで対面でやってきたことが、本当に必要なことか見直すことが必要だ」と指摘する。
教材以外では、諏訪中央病院(長野県茅野市)の玉井道裕医師が作成した手書きの冊子「新型コロナウイルス感染をのりこえるための説明書」が話題だ。同病院や茅野市のホームページから見ることができる。
冊子では、感染症の基本知識や予防方法を解説。また、同「地方版」では、地方に住んでいる人たち向けに、同「全国版」では、国内に緊急事態宣言が発令されて以降、より多くの方と共有したい、日常生活で気を付けることをイラストとともに説明している。
新型コロナウイルスでは感染に対する偏見やいじめなどが全国で起きているが、「説明書」では最後に「意図的に感染を広げる行為を行う人は悪ですが、意図的ではなく、感染してしまった人は悪ではありません。誰かを非難するのではなく、常に前向きに考え続け、この困難な状況をのりこえていきましょう」とつづっている。