学校と著作権の関係とは? 著作物を使用するときの注意点
トレンド近年、他人が作成したイラストをそのまま使用したり、アーティストが作曲した音楽を商用利用したり、民事訴訟で争っているニュースや報道が見受けられます。それらの著作物にはすべて権利が付与されており、一般的には「著作権」という形で利用の制限がかかっています。
この著作物の利用は、教育現場でも十分に注意しなければならない制度です。たとえば、授業で利用する音源、発表会や学芸会、運動会等のために作成した創作物、イラストなどがあげられます。今回は教育現場で著作権を侵害してしまわないために注意する点を解説します。
著作権は「法人・個人」すべての創作物に適用される
著作権は、企業や団体によって作られた経済的価値のあるものに関してのみ付随するのではなく、一個人にも適用される権利です。たとえば、音楽や絵画、文章、パソコンのプログラムといった、あらゆる創作物に対して創作者の死後70年まで著作物の権利が保護されることが定められています。
また、創作者の人格的利益を保護する「著作者人格権」と著作物の利用を承認または禁止する「著作権(財産権)」の2つに分けられます。
著作権は、著作者が自身の著作物に対して複製や翻訳などを独占する権利であり、知的所有権の一つとして有名です。一方、著作者人格権は著作権とは異なり、譲渡や相続することができず、著作者が死亡するまでその権利は無くなりません。
著作物を使用する場合は著作権者への許諾が必須?
他人が著作物を使用するには、著作権を持っている著作権者の利用許諾が必要です。
しかし、著作権法によって学校や家庭内などで用いられる、または一定の条件下であれば例外的に利用許諾の必要がなく、著作物の利用が認められています。例外として認められている代表的な例は4つです。
(1)私的使用のための複製(第30条)
家庭内や仕事以外の目的で使用する場合は複製利用が認められます。また、翻訳や編曲、変形などもできます。
(2)教科用図書等への掲載(第33条)
教育現場で目的のために必要とされる限度内で教科書に掲載できます。ただし、掲載する場合は一定の補償金を支払う必要があります。
(3)試験問題としての複製等(第36条)
入試や採用試験の問題内で著作物を使用、複製できます。また、同目的であれば翻訳も行えます。営利目的の試験であれば、一定の補償金を支払う必要があります。
(4)営利を目的としない上演等(第38条)
観客から費用を受け取らない上映や上演等も利用許諾が必要ありません。ただし、出演者に報酬を支払う場合はこの例外に当てはまりません。
このほかにも、引用や図書館における複製など、さまざまな条件下のもとで著作物が自由に使用できます。また、営利目的や他人の著作物使用により、金銭授受が発生が生じる場合は著作権者の許諾が必要です。
教育現場や学校で著作物の扱う注意点
学校で著作物の使用する場合、著作権法によって定められている範囲に沿って扱う分には問題ありません。しかし、生徒が創作した作品や外部から仕入れた情報には注意が必要です。
たとえば、授業内で生徒が作成したイラストや物などにも著作権が発生します。教員が勝手にその作品を使用や破棄はできません。
・学校で著作物を扱える具体例
学校で著作物を利用するにあたって、以下のような具体的な例があります。
―授業で使用するためにインターネットの情報や本の一部分をコピーし、問題作成
―運動会でクラスの旗に使用するためにキャラクターのイラストを使用
―道徳の授業の一部としてスポーツ選手のドキュメントを録画したテレビ番組を見る
これらは営利目的ではなく、著作物を自由に利用できる範囲内で収まっています。ただし、使用する前に著作権を侵害していないか、調査して利用するようにしましょう。
・学校で著作物を扱う時に違反となりやすい具体例
著作物を自由に使える場合もあれば、違反にあたる利用方法も存在します。たとえば、以下2事例は教育現場では特に注意が必要です。
―市販の学習ドリルや書籍などを丸々コピーして授業で配るなど
―学校行事にゲストを呼び、報酬が発生する場合や音楽を利用するなど
市販の問題集等は個人売買目的として販売をしているため、丸々コピーしてしまったのでは著作権者の利益を害してしまいます。
また、音楽の利用は「営利目的ではない」「入場料を受け取らない」「演奏者などの出演者に報酬の支払いがない」という条件下のもとで、自由に著作物を扱えます。報酬が発生する場合は、正式な手続きを踏んでから利用になります。
・生徒の創作物にも注意が必要
学校で扱う著作物は外部の情報だけとは限りません。生徒が作成した作文や図工作品の取り扱いにも注意が必要です。
―作文を文集に掲載する
―生徒の図工作品を校内に展示する
これらは創作・作成した生徒に対して、掲載許諾の同意が必要です。教員が無断で掲載したり、使用したりすることは認められていません。著作者人格権において、著作物の公表の有無を決める権利である公表権が生徒に認められているため、教員が勝手に決めてはなりません。
学校での著作物の扱いには著作権に対する理解と細心の注意を払う必要がある
今回は著作物を自由に扱える場合と違反にあたるケースについて紹介しました。
著作権は、身近に数多く存在している権利です。学校の中で教育目的に使う場合であっても、きちんとした理解ができていなければ違反に該当することもあります。
また、教材としての扱い方ばかりでなく、児童生徒の創作物に対しての扱いを誤ると人格的権利の侵害にもなってしまうため、著作物を扱う場合は細心の注意を払わなければならない重要な問題といえるでしょう。