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災害時に備えたマンホールトイレの設置訓練を実施

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マンホールトイレ設置訓練の様子
宮城・名取市立閖上小中学校

 災害時に地域の避難所となる学校施設では、防災機能の強化としてマンホールトイレの整備が進められている。しかし、いざというときに円滑に使用するためには、日頃から取り扱いについて習熟しておくことが重要になる。ここでは、2月20日に行われた名取市立閖上小中学校における設置訓練の様子を紹介する。

 下水道に直接つなげる仮設トイレ
 2018年4月に開校した閖上小中学校は、東日本大震災で津波被害に見舞われた教訓を生かし、校舎の高層化(4階建・海抜18m)や非常時に使える電気・給水設備を充実させるなど、自然災害に備えたさまざまな対策が施されている。その中で、災害時のトイレ機能の確保として整備されたのが、積水化学工業の「防災貯留型トイレシステム」だ。
 下水道に直接つなげる仮設トイレ専用配管を設ける本システムは、災害によって水洗トイレが使えなくなった際にプール水などを用いて排泄物を直接下水道管に流せるため、衛生的で臭気も軽減されるのが特長だ。しかも、貯留弁がマンホールと一体化しているため地震に強く、下水道の本管が破損した場合も弁によって排泄物を一定期間貯めておくことができる。
 なお、貯留槽1基で5個の仮設トイレが設置できるため、同校では車いす用も含めたパーソナルテントを設営し、500人/1日のトイレを確保する予定だ。

思ったより簡単に設営、課題も見つかる
 名取市教育委員会庶務課の阿部剛係長は「市内の学校でマンホールトイレを整備したのは本校が初めて。それだけに、実際にどのように設営するかを先生方と一緒に体験しておく必要がありました」と話す。
 設置訓練では、まずは業者がマンホールの開口から仮設トイレ(パーソナルテント)の組み立てまでの手順を見せ、そこから先生方が同じ作業に取り組むスタイルで行われた。設営にかかった時間は1基あたり、およそ15分程度。体験した先生方からは「思っていたよりも簡単に組み立てることができた」「訓練を重ねれば、もっと短時間で設置できる」という声が聞かれた。
 一方、マンホールの周辺がアスファルトだったため、ロープでテントを固定することが難しいという課題も見つかった。「今後は校舎の大規模改修などの機会を利用して、他校でも整備が進んでいくでしょう。今日の設置訓練で分かった課題を含め、それぞれの学校に合った設置の仕方を考えていこうと思います」と阿部係長。
 また、東日本大震災当時、閖上中学校の教員として被災した経験を持つ八森伸校長は、便座の座り心地を確かめるなど積極的に体験。「本校は独自の防災教育カリキュラムを取り入れ、命を守る教育を推進しているほか、防災拠点として地域合同による防災訓練も実施しています。今後はこうした設置訓練も取り入れて、災害時の安全安心の確保につなげていきたい」と抱負を述べた。


仮設トイレの骨組みなどを取りつける先生たち

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