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日本近代私立大学史再考

12面記事

書評

明治・大正期における大学昇格準備過程に関する研究
浅沼 薫奈 著
建学理念生かした教育課程など論考

 近年の統計によれば、日本の大学数は約800校、そのうち、私立大は77%を占め、そこで学ぶ学生数も200万人を超える。私学なくして、わが国の高等教育は成り立たないといっても過言ではない。そんな私学が、どんな歩みで現在に至ったのか、教育関係者なら少なからず関心を持つはずだ。
 書名に「再考」とあるが、再考の対象は帝国大学令の出た後の20世紀初頭、私学が「大学」名称を冠する時期である。そこに焦点を絞った本書は、私学の位置や私立大学の歩んできた過程を私学の立場から総合的に再考した学術論文なのだ。従って、読み取るには相当の構えが必要であるが、手助けとなる工夫も見られる。
 まず構成だ。取り上げる大学を創設起源時の目的により4分類し、具体的な大学名を挙げて論証する。今もなお、私学の双璧とされる早稲田・慶応をはじめとして、著名な大学が、独自の建学理念をどのように生かし、教育課程の整備に努めてきたか等が論考される。次いで、各章ごとの小括だ。大学昇格を果たした意義、その後の役割などがコンパクトに述べられ理解を助けてくれる。
 それにしても最後は人だ。各大学における指導者たちがいかにして学生の学習機会を提供してきたか、そして、自らの存在意義を自覚していたか、改めて考えさせられた。
(5500円 学文社)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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