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新型コロナで一斉休校 教員、思いは複雑

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 新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした政府の突然の休校要請から2週間。学校は教育課程外で子どもたちを預かったり、1カ月にも及ぶ休校中の子どもの学習や生活のサポートに取り組んだりと前例のない対応に追われている。最前線にいる教員たちの思いは複雑だ。(2・4面に関連記事)

「社会の学校依存を痛感」
居場所ない子の預かりも

 一斉休校が始まった後の今月6日の時点で「3週間以上の臨時休業」を取り、事実上の春休みに入ったのは小・中学校で半数、高校では3割に及ぶ。
 文科省はホームページにこの間の学校の対応として「動画配信サイトで教員が朝礼を実施する」「家庭訪問で食事の摂取状況をしっかり確認する」などの例を紹介。教員に休校中の子どもを手厚くサポートするよう求めた。
 「学校は単に勉強する以外に食事の提供や避難場所、保育など、いろいろな役割を持つ地域のインフラだということを再認識した」
 東京都世田谷区の中学校校長は、そう振り返る。
 学校には休校以降も、校外のスポーツクラブの活動がなくなり、時間を持て余した生徒がやってきた。この校長自身も、普段は不登校気味で教室へ入れない生徒が登校するという「逆説的な状況」を感じながらリポート作りなどを手伝ったという。
 大阪府寝屋川市のある教員も「社会が学校に大きく依存していることを改めて実感した」と語る。
 寝屋川市では昨年、災害発生時に小・中学校や幼稚園を自主登校とする制度を設け、今回の休校要請で今月24日までこの制度を実施している。
 市内の学校では、教員が交代で自主登校する子どもたちに対応し、給食や清掃指導も行っている。
 それでも休校中、地域住民から「公園で子どもが遊んでいる」と学校に電話がかかってくることもあるという。この教員は「今回は緊急事態のためやむを得ないが、これまで学校は、教育課程の垣根を越えて放課後の指導や夏休みの水泳指導など何でもやり過ぎていた」と指摘する。

保護者のストレスケアを
障害のある子 生活リズムの崩れ心配

 休校中の居場所づくりのため、学校が子どもの預かりを始めたことで教師は難しい立場に置かれている。 「教師としても親としてもつらい」
 都内の小学校の女性教諭はそう打ち明ける。
 小学校低学年と高学年の2人の子どもは、企業に勤める夫と交代で休みを取って面倒を見ている。休校前後、子どもが発熱し、自分は大丈夫なのか、クラスの子どもは大丈夫か不安だったと明かす。
 休校開始から1週間後、学校や学童クラブでの預かりが始まったが、自分の子どもを行かせる気はないという。どの程度の感染リスクがあるのか分からないと感じるからだ。
 「自分の子どもが感染する恐れもあるし、子どもから自分が感染して、クラスの子を感染させてしまうかもしれないと考えると怖い」と女性教諭は語る。
 障害や家庭環境など生活にリスクを抱える子どもたちへのケアも問われた。
 難聴学級を置く広島市立荒神町小学校。中井俊之教諭は休校開始直後に職員会議で、保護者の心理的な負担を軽くするような対応が必要だと呼び掛け、保護者にメールで保健便りやストレスケアのメッセージを配信した。必要があれば、家庭訪問などを通じて生活の様子を見取ることも求めた。
 中井教諭は「休校になって、すぐに宿題や成績処理ばかりを話題にすることには強い違和感を持つ。急な休みに動揺している子どもたちが安心して新学期や新年度を迎えられるようにすることが何より大切なことではないのか」と訴える。
 障害のある子どもたちに対しては、臨時休校によって生活リズムが崩れ、新年度の学校生活への影響を心配する声も上がる。
 九州地方の特別支援学校に勤務する男性教諭は「学校生活では1日の見通しを持たせ、時間を意識した学習活動を行ってきた。約1カ月も休みがあることで子どもたちがスムーズに学校生活のリズムに戻れるか心配だ」と不安を口にする。
 最高学年を前にした小学5年生への影響を指摘する声もある。横浜市立山内小学校の教員は、6年生への感謝の会が中止になったことについて「5年生が学校の代表として在校生をまとめたり、式に参加したりすることは最高学年の意識を高める大切な機会だったので残念だ」と言う。
 同校の佐藤正淳校長は「4月の行事を新たに見直すなどして、子どもたちが成長を実感できる機会をつくらなければいけない」と話す。

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