望ましい食べ方を食事バランスガイドで見える化
14面記事見本の献立のバランスを塗り分ける
日野市立旭が丘小学校
子どもたちが健康な生活を送るためには、体力運動能力の向上だけでなく、生活習慣や食育にも目を向ける必要がある。日野市立旭が丘小学校(猿田恵一校長)では、「進んでからだを育もうとする旭っ子」をテーマに、多彩な角度から丈夫な体を作る研究を重ねている。4年生は体育の授業で「食事バランスガイド」を用いた校内研究会を開催した。
体力向上の発展形で食育を推進
同校は「よく考える子ども なかよくする子ども がんばりぬく子ども からだをきたえる子ども」を教育目標に設定し、健康でたくましいからだと、思いやりの心を持ち、主体的に判断し行動する児童の育成を目指している。
平成28年度から30年度にかけて都内20校が指定された「アクティブライフ研究実践校」のうちの1校で、朝や中休みの運動の奨励、持久走やなわとびなどの実施で児童の体力は向上し「運動好き」が育っている。
この研究の発展形として、昨年度より食育に力点を置いた「体づくり」の研究を継続している。今年度の校内研究会では4年生の体育「育ちゆく体とわたし」の単元で、児童が主体的に食習慣を考える手立てを伝える授業を取り上げた。
二通りの食事バランス可視化で比較
4年生も3学期になると二次性徴にさしかかり、体に変化が起き始める時期でもある。児童には、心身の変化を支える重要な要因のひとつに食事があることを認識させたい。
そこで尾崎恒平主任教諭は、山村恵栄養士と連携し、農水省発行の「食事バランスガイド」を利用した授業を計画した。子どもたちは給食時に
・好き嫌いが多い
・食べる量が少ない
・配膳後に「食べられない」と食缶に戻す子どもがいる
・完食する児童が少ない
―などの様子が見られる。栄養のバランスだけでなく「食べるべき量」を知ることが意識の変化につながると考えた。
まず、子どもたちに、2パターンの食事例を示す。1つは、朝はパンと紅茶、昼はハンバーガーとジュース、夜はラーメンの献立。見ただけで子どもたちは「野菜が少ないよ」「体に悪そう」などと指摘する。2つめは、3食とも主食、主菜、副菜がそろった和食中心の献立だ。見ただけではどうバランスがよいのか、判断するのは難しそうだ。
そこで、尾崎主任教諭が用いたのが農水省・厚労省作成の「食事バランスガイド」だ。このガイドは、望ましい食事の組み合わせと適量をコマに例えて示したもので、健康的な食生活を啓発するツールとして知られている。
授業冒頭で提示した2つの食事を、コマの絵の入った専用ワークシートを用いて色を塗り、見比べさせた。すると「副菜がない」「乳製品や果物もない」と具体的に指摘できるようになる。「バランスの良い食事とは」をペアで話し合い、全員で「主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物が揃っていてコマの端まで量があるもの」と確認できた。
給食はなぜ体にいい?
続いて、その日の自分の朝食を書き出し、バランスガイドに当てはめる作業を行った。給食で食べた分を足しても摂取量が少ないことに気づいた子どももいた。
給食の役割について山村栄養士は「給食は1日の食事の3分の1の量にあたり、全部食べるとバランスのよい食べ方に揃うように作っている」と解説。先月出たハンバーガーにはミネストローネスープなど野菜がたっぷりの副菜が付いていたことを思い出させ、不足しているものをプラスすればバランスが改善されることも伝えた。
給食に関連付けた話は、子どもたちもよく覚えており、印象に残りやすい。「バランスのよい給食でも、減らしたり、残したりするとコマの形はいびつになって元気よくコマが回らない。食べてほしい量を目指して多く食べてほしい」と授業を締めくくった。次時は子ども同士で話し合いながら1日の食事について考えを深めていく予定だ。
学年に応じた活用を
授業後、研究協議が開かれ、実践女子大学生活科学部食生活科学科の白尾美佳教授が指導・講評を行った。白尾教授は日野市版の食事バランスガイドも作成している。
参観した教諭からはバランスガイドに掲載されていない食品はどう扱うか、エネルギーについては配慮しなくていいか、といった質問が出された。
猿田校長は「小学4年では、バランスが大事だと気づけるところで十分。5年生以降に栄養素や熱量につなげたい。大人になって、どのような食材に、どのような栄養素が含まれているかがわかる子を育てていければ」と講評した。
白尾教授はバランスガイド活用した食育を実践する際は、バランスガイドのコマの意味や形・色など、視覚的に理解させることが大事だと指摘。加えて「赤黄緑」の3色食品群を教えている場合には、バランスガイドと分類が異なる食品があることを整理し、児童が混同しないよう注意を促した。
「このバランスガイドは、日本人の食事に不足しがちな副菜、果物、乳製品などの必要性を認識し、食生活の見直しを促す手がかりとして活用してほしい」と話している。