科学的な教育研究をデザインする
15面記事証拠に基づく政策立案(EBPM)に向けて
米国学術研究会議 監修
R.J.シャベルソン、L.タウン 編
齊藤 智樹 編訳
「科学」となるための原則、条件を提示
数値目標の達成度などで評価することはあっても、教育の営みに関する効果測定は難しい。政策立案に際しては、いわゆる「エビデンス」を求められることも少なくない。それを支えているのは「科学的な教育研究」だろう。
本書は、米国学術研究会議が監修して、教育研究を科学とするための枠組み、条件などを提示してくれる。
例えば、連邦政府教育研究機関において科学を育成するためのデザイン原則として、
・科学、リーダーシップ、マネジメントに精通した人材を擁していること
・政策と実践の重要性に関する短期、中期、長期的な問題に立ち向かう集中的かつバランスのとれた研究のポートフォリオを作成すること
・研究のインフラに対して投資すること
―などを掲げ、原則の中には「不適切な政治的干渉から、教育研究機関を隔離すること」なども示す。
本書中には「学級規模の縮小は生徒の到達度を向上させるか」や「教師の給料と児童・生徒の学習成果」といった興味深い研究も紹介されている。
本書を読むと、教育研究する際、子どもの不利益にならないために比較研究が難しいなどの課題があることも分かる。
編訳者が日米の教育事情を踏まえて、丁寧に解説する「証拠に基づく政策立案」が可能か、関心のある方たちには参考になる。
(2860円 北大路書房)
(吹)