教師のための説明実践の心理学
18面記事山本 博樹 編著
苦戦する学習者を手助け、深い学びへ
編著者は本書のはじめにの中で、「一方的な説明」を問題視して生まれたアクティブ・ラーニングの登場に、疑問を呈していた。その上で説明の価値を、次のように書く。
<説明が独りよがりな言語活動などではなく、むしろ苦戦する受け手の学びを手助けし、深い学びを紡ぎ出す言語活動である>
まさに卓見である。説明なしの授業など、あり得ないからである。つまり教師は自分の各教科の授業の中で、説明の質的向上を図らなければならないのである。
本書には授業の中で使用される「説明」に関して、全部で15本の各論が収録されている。そして各論文の結びには「教師への提言」という簡潔で分かりやすい文章も収められている。
例えば「子どもの読解を促す説明実践」で犬塚美輪氏は書いていた。
<読み方は教えることができるし教えるべきだと考えてほしい>
現職時代を思い出す。社会科や理科の教科書の読み方を教えていただろうか、と。基本的な教科書の読み方を指導しなければ、学力向上は望めないと本書を読んで納得できた。
授業研究でもなかなか注目されない、授業者の説明行為に関した、ほとんど類書のない本書が出版されたことを心から喜びたい。
(2530円 ナカニシヤ出版)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)