性の多様性に関するいじめ・ハラスメントをなくすために
「なくそう！SOGIハラ」実行委員会　編
事例や支援策盛り込んだ入門書

　SOGIとは、性的指向（Sexual　Orientation＝性愛や恋愛の相手の性別）と性自認（Gender　Identity＝自分がどの性別なのかという認識）の二つの言葉の頭文字を取ったものである。日本では、戸籍上の性は男性と女性の二つしかなく、婚姻に関しては、男性と女性の異性婚しか法律的に認められていない。ところが、人間の性はそんな二分法で収まるほど単純なものではない。同性を好きになる人もいれば、戸籍上の性と性自認の性が異なる人もいる。SOGIは、こうした性の多様性を正当に理解する枠組みである。同時に、自らの性的指向や性自認の問題で悩み、葛藤しながら日々の生活を過ごしている人たちを支え、社会の問題として性の在り方を考えていく指針としての役割も果たしている。
　性はプライベートなものであり、一人一人の性のありようは人権として尊重されなければならない。その一方で、世の中には、同性愛者やトランスジェンダー（戸籍上の性と性自認の性との不一致）に対する偏見や差別に基づくハラスメントが存在している。SOGIハラをなくしていくことは、男らしさや女らしさに縛られている私たちの意識を解き放ち、多様な性の在り方を認め合う対等平等の自由な世界をつくり出す。SOGIハラの事例や支援、近年の社会的施策など、包括的に問題を論じた本書は最適の入門書である。
（１７６０円　大月書店）
（都筑　学・中央大学教授）