読書教育の未来
22面記事日本読書学会 編
教員養成段階の論説文教育など考察
今から60年も前に日本読書学会ができていたことを、本書を読むまで知らなかった。現役時代に評者は、例えば読書から読解への一つの手法として、多読の授業を主張したこともある。読書なくして国語科授業の充実はあり得ないからだ。
高校生や大学生の若者が、本を読まなくなったとよく聞く。しかし従来の読書教育の舞台は幼児教育や小学校教育が中心だった。今や読書教育は若者対策でなければならない。
紙の本を読むという本来の読書教育を、高校や大学のカリキュラムに加えていく必要がある。若者の本離れが進んだと嘆くだけでは、日本の知的水準が下がるだけだ。だからこそ本書の書名のように未来志向の読書教育が求められる。
そのためには本書では、第3章の「読みの教育」に収められている12本の論考が示唆を与える。例えば岩永正史氏は、「大学における読みの教育と教員養成―受講生の実験参加を通して説明・論説文の教育を再考する試み」という論文で、これから読書教育の根底を支える教師の在り方にも言及される。
現状を考えると、中学校、高校、大学の読書教育の充実が欠かせないはずである。だからこそ本書を編まれた日本読書学会の積極的な提案をさらに期待したい。
(5500円 ひつじ書房)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)