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戦後の教育実践、開拓者たちの声を聴く

12面記事

書評

戦後教育実践セミナーI
早稲田大学教師教育研究所 監修
「戦後教育実践セミナー」編集委員会 編
教師文化生み出した6人の講演録

 本書は、一口に言えば、早稲田大学の講座「戦後教育実践セミナー」における講演記録集である。本書発刊の動機が、まえがきに記されている。「わが国の教師文化が生み出した財産と考え、未来の教師文化の発展への寄与を願う」とある。うれしい言葉だ。
 その教師文化を生み出した先人として取り上げられているのは、美術教育の久保嶋信保、学級通信の村田栄一、綴方運動の乙部武志、総合学習実践の大槻武治、仮説実験授業の板倉聖宣、山びこ学校の卒業生・佐藤藤三郎の6氏である。いずれも著名なので読者諸氏もご存じであろう。
 構成はおおむね、プロフィル、講演記録、解題、フロアとの応答となっている。いずれの演者も講演当時70~80代の高齢者であり、今聴いておかなければ、との思いもあろう。何といっても自主的で創意工夫を生かした独自の教育実践を貫いた自恃の方々ばかりであり、そのユニークな主張は読んでいて楽しくなるほどだ。フロアの若者たちへの回答も生き方がにじみ出ていて聴くに値する。
 本書は、前述した先人たちが2011(平成23)~13(同25)年に行った記録をまとめている。これ以降の講演も当然実施されているはずだ。つまり、これから第2、第3の「開拓者たちの声を聴く」シリーズが期待される。大いに楽しみにしたい。
(2640円 学文社)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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