グローバル化時代の教育改革 教育の質保証とガバナンス
12面記事東京大学教育学部教育ガバナンス研究会 編
学力保証、英語教育など論考
本書には書名に対応した論文が、3部構成で18本収録されている。現場の教師がこの18本の論文を読み尽くすのは難しいかもしれない。しかし例えば、第I部の「グローバル化と求められる教育の質の変化・転換」の中に収められている「習得・活用・探究のプロセスと学力保証」(市川伸一氏)や、「『グローバル教育』と英語政策の落とし穴」(斎藤兆史氏)などの論考は必読文献である。
特に後者の論文は、英語教育を進めればグローバル化時代に即応した教育が展開できると実に浅く考えている教育関係者に、警鐘を鳴らしている。こういう論文こそ、文科大臣をはじめとする教育改革の旗振りをしている方に、真剣に読んでいただきたいと切に願う。
<外国語活動の導入によって、「コミュニケーション能力」の育成すらままならず、逆にその犠牲となった他教科の学力低下を引き起こす危険性があり…>
新教育課程による教育改革が、このような危険性もはらんでいることに、学校現場は注視していかなければならない。
この他、第III部の中の「授業研究システムにおける教師の専門的学びの変革」(秋田喜代美氏)や「教師の学習の契機としての小中一貫教育」(藤江康彦氏)などの論考が、実際の教育現場には役立ちそうである。
(3520円 東京大学出版会)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)