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災害に強い「防災貯留型仮設トイレシステム」を小学校に設置

14面記事

施設特集

設置前

佐賀県鹿島市

 避難所での生活で水洗トイレが機能しなくなると不衛生になり、被災者が健康障害や精神的ストレスを生じやすいため、「減災」の1つとして災害時のトイレ確保が重要視されている。こうしたなか、鹿島市では平成30年度、災害時は避難所となる市立鹿島小学校に下水道直結のマンホールトイレを整備した。その理由について、環境下水道課の橋川宜明課長補佐に話を聞いた。

災害の教訓を生かした仕組み
 この「防災貯留型仮設トイレシステム」(積水化学工業)は、下水道本管から設置する敷地内へ下水道管を引き込み、専用のマンホールを一定間隔で設置し、その上に組み立て式のトイレを設けて使用する仕組みだ。その特徴は、断水で上下水道の使用ができなくなった場合は、プールの水などを利用できること。加えて、下水道管路が破損した場合も貯留機能があるため継続使用が可能で、貯留量が限界に達し次第、し尿汲み取り業者に汲み取ってもらうなど、これまでの大規模災害時の教訓が生かされていることにある。
 さらに、「汲み取り式の仮設トイレに比べると、臭気が少なく清潔。しかも、段差がないため、高齢者や身体が不自由な人でも使いやすいという長所があります」と橋川氏。同校では体育館裏に、人感センサー式のLED照明を備えたパレット型の仮設トイレを5台(身障者用1台含む)設置できるようにした。

運動会を通じて地域にお披露目
 しかし、以前は大規模な災害が起こらないと使用しないトイレの設置には懐疑的だったという。その考えを改めるきっかけになったのが、北九州市がマラソンなどのイベント時にマンホールトイレを利用していると聞いたことだった。「いろんな利用方法があることが分かり、それならば、まずは災害時の避難所である小学校に設置し、地域住民が集まる運動会で披露しようと思いました」と経緯を語る。
 災害が発生すると情報伝達手段が限られてしまうため、この機会にマンホールトイレの存在を知ってもらうことが大切になるからだ。また、「いざという時に速やかに設置するためにも、慣れておくことは重要です。なお、市ではし尿汲み取り業者と災害時には仮設トイレの設置で協力する協定を締結しています」と説明する。

安心して避難できると高い評価
 9月24日に行われた運動会では、昨年に続き2度目になる設置訓練を実施し、児童や保護者など約150人が実際に利用した。「多くの人が集まる運動会ではトイレが不足するため、PTAからは今年も設置してくれるのかという問い合わせがあったほどで、女性を中心に高い評価をいただきました。また、近隣住民からも、災害時にこれが使えるなら安心して避難できる、といったうれしい声も届いています」
 下水道は地下にあるため、なかなか目立たない。ある意味、こうした機会にその大事さを認識してもらえるのはありがたいと橋川氏。「財源が厳しい中ですが、できれば1年に1箇所ずつは整備していきたいですね」と抱負を語ってくれた。


設置後とマンホールトイレ内部

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