世界へ広がる日本の教育~双方向でつながる国際交流へ~
近年、国際イベントなどで外国人から見た日本人の行動や習慣などが注目されることが増えている。これらの背景には、日本ならではの教育の特徴と密接に関わるものも多く、海外からの関心も高い。そこで、日本の教育を世界へ発信する上で現在文科省やさまざまな機関で進められている取り組みについて紹介する。
【1】日本型教育の海外展開を推進 その現状と展望について
(三輪善英・文部科学省大臣官房国際課国際戦略企画室長)
―現在国際課で推進されている、教育における国際交流、国際協力の要点についてお聞かせください。
社会や経済のグローバル化が進み、国際社会や日本を取り巻く環境が大きく変化する中においては、諸外国との交流や協力を一層充実させていくことが重要です。このため、文部科学省大臣官房国際課では、例えば将来日本の学校のリーダーとなる教員を対象に中国・韓国・タイに派遣し現地教員と交流する事業や、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)において日本から理数教育の専門家を派遣する事業を実施するなど、諸外国からの期待に応えると同時に日本の教育の国際化に資する取組を推進しています。
―日本の先生が日々実践されている算数、理科といった理数系教科、図工、体育、音楽な情操教育、そして特活、日直などの日本型教育コンテンツが世界へ発信されることについて、日本の先生にとってのメリット、及び教育のグローバル化という観点から一言お願いいたします。
近年、日本の教育制度に対する諸外国からの関心が高まっており、日本型教育を導入したいという声が寄せられています。日本型教育が海外へ展開される過程では、日本の教員が現地教員と交流したり、現地における指導方法などを学ぶ機会などがあります。こうした取組は、参加する日本の先生一人ひとりが、自身の指導方法などを見つめ直すきっかけになると同時に、これまで国内で行ってきた教員研修や国際交流の更なる充実にもつながっています。
―一つの取り組みとしてJICAでは、開発途上国の教員に対して日本の教員の指導法、また掃除や給食当番といった日本の学校の日常を示した動画等を展開しています。開発途上国に対する教育協力という観点で、こういった取り組みに対するご意見をお聞かせください。
開発途上国に対する日本型教育の展開は、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する重要な取組の一つです。
その上で、インターネットなどを活用した動画による発信は、世界中の人々が時間や場所を問わずに日本型教育に触れることができる機会として有意義であり、今後の更なる活用が期待されます。なお、文部科学省が推進している「日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)」のホームページでも、日本の小学校の一日の様子をわかりやすく紹介した動画を複数言語で掲載しています。(https://www.eduport.mext.go.jp/en/index.html)
【2】国を越えて先生同士をつなぐ JICAと民間サービスの試行的取組
小中高の先生が授業実践や学級経営などについての記録を共有する教員専用ポータルサイト「フォレスタネット」は、サービス開始以降、授業準備やノウハウの共有といった面から先生方を支援してきた。
同サービスを運営する株式会社スプリックスでは今年、独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)とセネガルにおいて試行的な取り組みを実施するなど、その支援の幅を海外に広げている。セネガルでは、JICAが同国で実施していた現地の子どもの学びを向上させるプロジェクトに「フォレスタネット」のもつリソースを活用し、よりインタラクティブな形での教育協力の方法を探った。具体的には同サービスにてコンテンツを投稿している先生による授業動画を制作し、日本の先生の指導法をセネガルの先生へ届けている。
また、授業だけでなく双方の学校の様子を撮影した動画コンテンツの交換も行われた。この取り組みは教育支援という目的だけでなく、日本の先生方が日本型教育の在り方や自身の指導を見つめ直す機会にもつながっている。
日本からの動画
セネガルの授業