PTAをめぐる卒業祝い費用の問題
15面記事「コサージュ問題」としてネットでも話題に
これまでの学校の慣習を見直すきっかけに
「PTA未加入」が子どもの不利益に
昨今、これまで学校が当たり前のように続けてきた慣習が、社会状況の変化によって問題視されるケースが様々なところで噴出している。その象徴的な例が「PTAに加入していない子どもには卒業記念品が配られなかった」というニュースで話題になった、PTAの任意加入問題などだ。
もともとPTAは任意加入を前提とする団体だが、半ば暗黙の了解ごとのように「保護者全員が入る」ことを建前にしてきた経緯がある。だが、近年では共働き世帯が主流になるに連れ、PTAのあり方そのものに疑問を持ち、加入しない保護者も増えていることから、これまで子どもたち全員に行ってきた慣習的な取り組み自体が通じなくなってきている。
今回取り上げたPTA未加入の保護者の子どもに不利益が生じる問題は、まさにそうした建前と現実とのずれが表面化した結果であり、そのことを不服と感じた保護者が裁判で争うといったところまで事態が発展した例もある。
社会変化に追いついていない学校の仕組み
一般的に卒業を祝う費用は、自治体による公費で賄うことが基本になるが、実際には卒業証書と一緒に手渡されるコサージュの費用は「PTA予算」に頼っていたり、あるいは、公費で贈られる記念品とは別にPTAからも記念品を贈ったりすることを慣習的に続けている学校も多いようだ。
しかし、社会や生活スタイルの変化によって保護者の考え方が多様化している中で、多くの学校がこれまでと同じように続けていけば、遅かれ早かれ軋轢を生じることになるのは明らかである。なぜなら、保護者の立場から見れば、学校の常識は一般社会と比べて大きな隔たりがあることが感じられるからだ。
つまり、いつまでも慣習に寄りかかってうまくいくほど、社会変化のスピードは緩やかではないのであり、いわば慣習的な仕組みを削ぎ落して成長を続けているビジネス社会に生きる保護者たちにとっては、こうした社会変化に追いついていない学校の仕組みに対して不満を感じるのは無理がないことでもある。
さらに、少子化によって子ども1人にかける教育熱が高く、個性の尊重が望まれる社会にあっては、学校の慣習自体にメスを入れる転換期を迎えているといっても過言ではない。そう考えると、PTA組織などのあり方も時代の流れに沿って変えていく必要があるといえる。
門出の日を台無しにしないためにも
したがって、卒業祝いの費用についても、こうしたトラブルを引き起こさないためには、本質的にはすべて公費で賄うことが求められる。あるいは、それが無理な場合でも「卒対費」などの学校徴収金で一律に補うことが賢明であると考える。
いずれにしても、せっかくの子どもたちのハレの日となる門出の場を台無しにしないためにも、学校やPTAは卒業祝いの費用の集め方について見直すことをすすめたい。
何よりそうすることが、これまで学校で行ってきた他の慣習についても「どう変えていくべきか」を考えるきっかけになり、本当の意味での開かれた学校づくりに近づくことになるからだ。