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子どもの発達が気になったら

18面記事

書評

はじめに読む発達心理・発達相談の本
加藤 弘通・岡田 智 著
前向きに捉え寄り添うために

 大学の心理学の授業で、「発達のイメージを絵に描く」という課題を出すことがある。代表的な絵は、坂道や階段を上っていくものや小さい物がだんだんと大きくなっていくものだ。このことから、学生たちが、発達を肯定的なものと考えていることが分かる。
 確かに、小さな子どもの姿を見ていると、背が伸びていったり、話し言葉の数が増えていったりする。そうした現象を発達と考えるのは、ごく自然のことなのだと言えるだろう。
 「できなかったことが、できるようになる」「分からなかったことが、分かるようになる」。発達とは、そういうことだけなのか。発達には、もっと違う側面が含まれていないのか。本書には、このような、発達の概念の根本的捉え直しを求める鋭い問題意識が貫かれている。反抗期や思春期の不安など、ともすれば否定的に見られがちなことを発達の結果として生じたものと考えてみる。そうすれば、子どもの捉え方も随分と変わることになる。発達の方向性は同じでも、子どもは一人一人違った存在になっていく。発達の遅れは、子どもだけに由来するのではなく、周囲の大人や環境が影響していることもある。本書が述べる、こういった視点も大変重要である。
 「発達の呪縛」から自らを解き放つことで、大人は子どもの発達に寄り添うことができる。本書は、その大切さをやさしく教えてくれる。
(1296円 ナツメ社)
(都筑 学・中央大学教授)

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